電離真空計(読み)デンリシンクウケイ(その他表記)ionization vacuum gauge

化学辞典 第2版 「電離真空計」の解説

電離真空計
デンリシンクウケイ
ionization gauge

気体の分子密度を測定すれば気体の圧力を知ることができるが,気体の分子密度を直接測定することは困難である.そこで,この分子密度に比例する量を測ることができれば,気体の圧力を間接に知ることができる.この考え方にもとづいたものの一つに,電子電流を用いて気体分子を電離し,生じたイオンを集め,そのイオン電流を読みとれば,電流値は気体圧力の低い範囲では気体の分子密度に比例しているので,真空計として用いることができるはずである.この原理による真空計が電離真空計である.電離のための電子源として,熱陰極を用いたものを熱陰極電離真空計といい,冷陰極を用いたものを冷陰極電離真空計という.また,放射能物質を用いたものに,アルファトロン電離真空計がある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電離真空計」の意味・わかりやすい解説

電離真空計
でんりしんくうけい
ionization vacuum gauge

真空計の1種。低圧の気体分子を電子衝撃によって電離すると,生じた正イオン電流が気体の圧力に比例することを利用する。三極真空管と同様な電極配置をもち,陰極は熱陰極型と冷陰極型の2種類があるが,前者をさすことが多い。また,正イオン電流をプレートに集める方式と針状のコレクタに集める方式 (ベアード-アルパート真空計) があるが,後者の方が高真空 ( 10-7 Torr以下) の測定に適する。熱陰極型は,測定可能範囲が 10-1~10-10 Torrであり,測定法も比較的容易であるが,熱陰極が切れやすく,被測定系に与える攪乱が大きいという難点もある。これに対して冷陰極型は,精度は劣るが,被測定系に与える攪乱は比較的小さく,故障も少い。気体の電離にラジウムのα線を使う方式もある。最高度の真空がはかられ,信頼度も高いので標準用や工業用として用いられる。

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世界大百科事典(旧版)内の電離真空計の言及

【真空計】より

…高真空領域では,熱電子によって気体分子を電離し,その結果生成したイオンの量を測るという方法が一般的である。これを電離真空計ionization gaugeという。やや高い圧力まで測定できるものをシュルツ型といい,超高真空領域まで使用できるよう改善されたものをB‐A型と呼ぶ。…

※「電離真空計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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