翻訳|ionization
(1)電解質が溶媒(多くは水)の中でイオンに解離することをいう。イオン化と同じ。たとえば、塩化ナトリウムを水に溶かすとほとんど全部が、ばらばらの水和した(水分子を伴った)ナトリウムイオンと水和塩化物イオンになる。酢酸を水で薄めると、酢酸分子が一部解離して水和した水素イオンと、水和した酢酸イオンを生ずる。このときの塩化ナトリウムや酢酸を電解質といい、そのなかで塩化ナトリウムなど電離の度合いの高いものを強電解質、低いもの(酢酸など)を弱電解質という。
この電離も化学反応の一種であるから質量作用の法則が適用できる。たとえばHAという酸については、
HA+H2O―→H3O++A-
K=[H3O+][A-]/[HA][H2O]
このときの平衡定数Kを電離定数という。
(2)多くの気体の場合、原子あるいは分子が高エネルギーの電子に衝突されたり、あるいは光、放射線などの照射を受けて電子を失って陽イオンとなる、あるいは陰イオンとなるような場合をいう。
(3)中性の分子や原子が正または負の電荷をもらってイオンになることをいう。たとえば、水やアンモニアなどの液体は、
H2OH++OH-
2NH3NH4++NH2-
のように解離しており、生じたイオンは元の中性分子との間に平衡を保っている。
[戸田源治郎・中原勝儼]
化合物が解離してイオンを生ずる現象。イオン化ともいう。気相中で化合物MXを電離してM⁺とX⁻とにするには,Mのイオン化エネルギーIMとXの電子親和力EXとの差(IM-EX)にMXの解離エネルギーDを加えただけのエネルギー(IM-EX+D)が必要である。このエネルギーは一般にきわめて大きなものになるが,高エネルギー放射線の照射などによって気相中での電離を起こさせることができる。これに対し,電解質を溶媒に溶かすときには,イオンが溶媒和によって安定化されるために,電離が容易に起こるようになる。多くの電解質が水によく溶けてイオンに解離するのは,水和によるイオンの安定化のためである。電解質MXの溶液において,加えたMXの量から求めたMXの全濃度をc,溶液中で解離しているイオンM⁺(またはX⁻)の濃度をc′とするとき,MX全体に対するイオンの割合を示す量,すなわちα=c′/cをMXの電離度(または解離度)という。
執筆者:玉虫 伶太
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電解質の一部または全部が溶液中で陽イオンと陰イオンに解離する現象.電解質の電離には溶媒の次の二つの挙動が重要である.その一つはイオンが溶媒分子と相互作用し,溶媒和することである.この溶媒和のエネルギーは負の値で通常の化学結合のエネルギーより小さいが,ファンデルワールスのエネルギーや水素結合のエネルギーよりも大きい.もう一つは溶媒の誘電的効果のため,イオン間の静電的相互作用を減少させることである.この二つの効果のため,電解質は誘電率の大きい極性溶媒に容易に溶解して電離すると考えられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… イオンは,電解質の溶解液(溶融塩)や溶液の中で生成するばかりでなく,気体放電や気体の放射線照射,分子の中での電子移動などによっても生成する。このようなイオン生成現象をイオン化あるいは電離という。とくに解離あるいは放射線によってイオンが生じる場合は電離と呼ぶのがふつうである。…
…その値は25℃で1.5×10-23気圧で,温度が高くなるとともに大きくなり,897℃で1気圧になる。 電解質がイオンに解離する場合をとくにイオン解離または電離という。気相では電離は起こりにくく,水のような誘電率の大きい極性溶媒中でとくに起こりやすい。…
※「電離」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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