電離(読み)デンリ(英語表記)ionization

翻訳|ionization

デジタル大辞泉 「電離」の意味・読み・例文・類語

でん‐り【電離】

[名](スル)《「電気解離」の略》
原子分子電子を放出または取り入れてイオンになること。イオン化
電解質が水などに溶けてイオンに分かれること。

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精選版 日本国語大辞典 「電離」の意味・読み・例文・類語

でん‐り【電離】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「電気解離」の略 )
  2. 分子・原子が正または負に帯電してイオンになること。気体の場合はイオン化ともいう。中性の分子が電子を得ると陰イオンに、失うと陽イオンになる。
    1. [初出の実例]「『放射線』とは、電磁波又は粒子線のうち、直接又は間接に空気を電離する能力をもつもので」(出典:原子力基本法(1955)三条)
  3. 電解質が溶液中でその一部または全部を陰または陽イオンに解離すること。〔電気工学ポケットブック(1928)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「電離」の意味・わかりやすい解説

電離
でんり
ionization

(1)電解質が溶媒(多くは水)の中でイオンに解離することをいう。イオン化と同じ。たとえば、塩化ナトリウムを水に溶かすとほとんど全部が、ばらばらの水和した(水分子を伴った)ナトリウムイオンと水和塩化物イオンになる。酢酸を水で薄めると、酢酸分子が一部解離して水和した水素イオンと、水和した酢酸イオンを生ずる。このときの塩化ナトリウムや酢酸を電解質といい、そのなかで塩化ナトリウムなど電離の度合いの高いものを強電解質、低いもの(酢酸など)を弱電解質という。

 この電離も化学反応の一種であるから質量作用の法則が適用できる。たとえばHAという酸については、
  HA+H2O―→H3O++A-
  K=[H3O+][A-]/[HA][H2O]
このときの平衡定数K電離定数という。

(2)多くの気体の場合、原子あるいは分子が高エネルギーの電子に衝突されたり、あるいは光、放射線などの照射を受けて電子を失って陽イオンとなる、あるいは陰イオンとなるような場合をいう。

(3)中性の分子や原子が正または負の電荷をもらってイオンになることをいう。たとえば、水やアンモニアなどの液体は、
  H2OH++OH-
  2NH3NH4++NH2-
のように解離しており、生じたイオンは元の中性分子との間に平衡を保っている。

[戸田源治郎・中原勝儼]

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改訂新版 世界大百科事典 「電離」の意味・わかりやすい解説

電離 (でんり)
electrolytic dissociation
ionization

化合物解離してイオンを生ずる現象。イオン化ともいう。気相中で化合物MXを電離してM⁺とX⁻とにするには,Mのイオン化エネルギーIMとXの電子親和力EXとの差(IMEX)にMXの解離エネルギーDを加えただけのエネルギー(IMEXD)が必要である。このエネルギーは一般にきわめて大きなものになるが,高エネルギー放射線の照射などによって気相中での電離を起こさせることができる。これに対し,電解質を溶媒に溶かすときには,イオンが溶媒和によって安定化されるために,電離が容易に起こるようになる。多くの電解質が水によく溶けてイオンに解離するのは,水和によるイオンの安定化のためである。電解質MXの溶液において,加えたMXの量から求めたMXの全濃度をc,溶液中で解離しているイオンM⁺(またはX⁻)の濃度をc′とするとき,MX全体に対するイオンの割合を示す量,すなわちα=c′/cをMXの電離度(または解離度)という。
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百科事典マイペディア 「電離」の意味・わかりやすい解説

電離【でんり】

(1)気体の原子または分子がイオンとなること。イオン化とも。紫外線・X線・γ線など短波長の電磁波,あるいは電子・陽子・α線などの粒子線を照射すると起こり,高温低圧条件下では自然にある程度イオン化する。(2)電解質が溶液中で一部イオンに解離すること。
→関連項目イオン解離空中電気電離度

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化学辞典 第2版 「電離」の解説

電離(電解質の)
デンリ
electrolytic dissociation

電解質の一部または全部が溶液中で陽イオンと陰イオンに解離する現象.電解質の電離には溶媒の次の二つの挙動が重要である.その一つはイオンが溶媒分子と相互作用し,溶媒和することである.この溶媒和のエネルギーは負の値で通常の化学結合のエネルギーより小さいが,ファンデルワールスのエネルギーや水素結合のエネルギーよりも大きい.もう一つは溶媒の誘電的効果のため,イオン間の静電的相互作用を減少させることである.この二つの効果のため,電解質は誘電率の大きい極性溶媒に容易に溶解して電離すると考えられる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電離」の意味・わかりやすい解説

電離
でんり
electrolytic dissociation

電解質溶液ではその溶液内に未解離の分子と,解離して生じたイオンとが存在し,両者の間には平衡状態が成立している。このようにイオンに解離する現象を電離という。 1887年,S.アレニウスによって電離説として提唱された。電離する割合を電離度という。現在では強電解質は完全に電離していると考えられている (デバイ=ヒュッケルの理論 ) 。広義には中性の原子や分子が放射線や熱などのエネルギーを吸収してイオンになる (イオン化) 現象を称する場合もある。

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世界大百科事典(旧版)内の電離の言及

【イオン】より

… イオンは,電解質の溶解液(溶融塩)や溶液の中で生成するばかりでなく,気体放電や気体の放射線照射,分子の中での電子移動などによっても生成する。このようなイオン生成現象をイオン化あるいは電離という。とくに解離あるいは放射線によってイオンが生じる場合は電離と呼ぶのがふつうである。…

【解離】より

…その値は25℃で1.5×10-23気圧で,温度が高くなるとともに大きくなり,897℃で1気圧になる。 電解質がイオンに解離する場合をとくにイオン解離または電離という。気相では電離は起こりにくく,水のような誘電率の大きい極性溶媒中でとくに起こりやすい。…

※「電離」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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