青熱脆性(読み)せいねつぜいせい(その他表記)blue brittleness(shortness)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「青熱脆性」の意味・わかりやすい解説

青熱脆性
せいねつぜいせい
blue brittleness(shortness)

炭素鋼を 200~500℃で塑性変形しようとするときに現れる,強度の上昇と延性の低下現象。原因についてはおよそ次のように考えられる。金属が変形するのは転位といわれる結晶格子の乱れが結晶中を移動することによる。結晶の中に不純物元素があるとそれは転位に集まろうとする。この傾向は温度が低いほど強く,変形中に転位が動くと不純物元素もそれを追って動こうとする。すなわち転位は不純物元素を引きずって動くのである。不純物元素の移動速度は低温ほど低い。したがって,低過ぎもせず高過ぎもしない中間の温度で,転位が受ける「引きずり力」は最大となる。炭素鋼では炭素と窒素 (主として後者) の引きずり力が上記の温度で十分に大きく,その結果,変形に要する応力が高まるとともに変形の限界 (延性) が低下する。「青熱」の意味は,鋼をこの温度に加熱すると薄い酸化膜が生成してその厚みによる干渉色で青く見えることによる。この温度域で加工すると強度が高まることを利用し,ピアノ線の製造が行われる。

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