頭蓋単純写(読み)とうがいたんじゅんしゃ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「頭蓋単純写」の意味・わかりやすい解説

頭蓋単純写
とうがいたんじゅんしゃ

「ずがいたんじゅんしゃ」ともよむ。単純頭蓋撮影法、頭部単純撮影ともいい、造影剤や空気を使用しないで頭蓋骨の直接的、間接的変化をX線でとらえ、頭蓋骨および頭蓋内の病変を診断する検査法である。頭蓋骨の大きさ、形、骨の厚さ、骨縫合の状態、骨折の有無などのほか、トルコ鞍(あん)の変化、異常な血管溝、異常な石灰化像、指圧痕(こん)(大脳圧痕)の有無などから頭蓋内の病変も診断できる。また、頸椎(けいつい)移行部の変化や副鼻腔(びくう)の状態などから頭蓋周辺の疾患についても診断される。

 一般に用いられている撮影法には側方向投影法、矢状方向投影法、半軸方向投影法がある。側方向投影法は、頭軸に直角なX線束を右側から左側へ、また逆に左側から右側に入れて二方向撮影をするもので、骨折線などではその部位の周辺部が鮮明に写る。矢状方向投影法は、ドイツ水平線(眼窩(がんか)下縁と外耳孔上縁を結ぶ耳眼窩水平線)に平行に入るX線束を用いて前後および後前の二方向撮影を行う。半軸方向投影法は、X線束を頭軸とドイツ水平線の中間からフィルム面に斜めに入れるもので、側頭骨岩様部や後頭部をみるタウンTowne投影法、上顎洞(じょうがくどう)や眼窩をみるウォーターWaters投影法、視束管をみるレーゼRhese投影法、錐体(すいたい)骨をみるステンバーStenvers投影法などが繁用される。そのほか、陥凹骨折には接線方向撮影、頭蓋底骨折にはX線束を頭軸に平行に入れる軸方向撮影、頭蓋骨の発育を経時的にみるときには頭部規格撮影を用い、必要に応じ拡大撮影、断層撮影も行う。

[加川瑞夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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