知恵蔵 「香港区議会議員選挙」の解説
香港区議会議員選挙
区議会は、地域の福祉・衛生・交通・文化施設の運営といった身近な問題の施策について、香港(自治)政府に提言できる。しかし、法律制定や予算審議・議決などの権限は香港立法会(議会)にしかなく、区議会は政府の諮問機関のような役割を与えられているに過ぎない。なお、立法会は定数70で、比例代表と職業別代表の各半数ずつから成る。このように、区議会の権限は立法会と比べて限定的だが、区議会選挙は1人1票の直接選挙であることから、香港市民の民意が最も明確に反映される選挙として注目される。また、香港政府のトップである行政長官を選ぶ1200人の選挙委員のうち、117人が区議会議員に割り当てられるため、一国二制度下で保証されている「高度な自治」への一定の影響力も持つ。
2019年11月の区議会選挙は、香港政府への抗議デモ(五大要求デモ)が加熱する中で実施され、過去最多の約1100人が立候補し、投票率も史上最高の71.2%を記録した。全区で親中派と民主派が争った結果、民主派が8割超えの385議席を獲得(改選前は約3割)。親中派は富裕層や本土出身者(新移民)が多い選挙区で議席を守ったが、選挙前の予想をはるかに上回る民主派の圧勝に終わった。林鄭月娥(キャリー・ラム)率いる香港政府への不満が投票率を押し上げ、言論弾圧を強める中国政府への反発が民主派圧勝の結果をもたらしたと見られる。中国共産党系メディアは選挙が実施されたことを伝えるにとどまり、中国政府も公式な声明は出していない。
(大迫秀樹 フリー編集者/2020年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報