化学辞典 第2版 「高分子効果」の解説
高分子効果
コウブンシコウカ
polymer effect
相当する低分子のモデル化合物に比べて,高分子化合物の示す物理的,化学的性質がいちじるしく異なる場合がある.この現象を高分子効果という.その代表的な特徴としては,
(1)溶解性,相互作用;溶媒の種類により高分子化合物は形態をかえ,その結果,粘度に大きな変化が生じる.そのために反応性に大きな効果が現れる.また,高分子化合物と反応物質との親和性(相互作用)が,その反応性に大きな影響を及ぼすこともある.
(2)隣接(近傍)基効果;低分子化合物の場合にも,反応位置の近傍にある官能基が,その反応性を左右することはよく知られているが,官能基が多数結合している高分子化合物においては,その効果はいちじるしく増大する.たとえば,ポリアクリルアミドの加水分解反応において,その分解速度は,反応の進行に伴いいちじるしく加速され,いわゆる自触媒作用を示す.それは生成した-COO-基が,隣接基を攻撃することにより酸無水物を形成し,これが分解速度を促進しているものと考えられている.
(3)多機能性(polyfunctionality);多官能性高分子化合物においては,高分子化合物中のある種の官能基により反応物質が引きつけられた状態で,別の官能基により反応が進行するために,いちじるしく反応速度が増大するような現象が起こる.
(4)立体構造による効果;高分子化合物のコンホメーション(立体配座),立体規則性,結晶性などにより低分子化合物の場合に比べて,大きな立体構造による効果が生じる,
などがあげられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報