高IgM症候群

内科学 第10版 「高IgM症候群」の解説

高IgM症候群(原発性免疫不全症候群)

(5)高IgM症候群(hyper-IgM syndrome)
概念・病因
 免疫グロブリン重鎖遺伝子のクラススイッチ再構成に障害があり,IgM,IgDの産生は正常だが,IgG,IgA,IgEの産生が障害される.T細胞からB細胞へのシグナル伝達異常とB細胞の内因性異常がある.X染色体上のCD40リガンド(CD40L)の遺伝子異常によるものの頻度が高いが,CD40,AID,UNGなど常染色体劣性遺伝もある.
臨床症状
 高IgM症候群の臨床症状は,①IgG,IgAの低下による細菌感染症,②好中球減少症による口内炎・歯肉炎,③CD40-CD40Lのシグナル伝達異常に起因しPneumocystis jiroveciなどの真菌やクリプトスポリジウムなどの原虫による日和見感染症に罹患する.自己免疫症状として血球減少症,関節炎,炎症性腸疾患を合併する.
検査成績
 T細胞数・B細胞数は正常で,正常またはそれ以上の血清IgM,IgDを有しながら,IgG,IgA,IgEの著明な低下を特徴とする.リンパ球増殖反応は正常で,これは乳児期のニューモシスチス肺炎症例では重症複合免疫不全症との鑑別に重要である.CD40Lの異常によるものでは,活性化したT細胞上のCD40Lの発現が低下していることが多く,CD40Lの塩基配列に異常を認め,好中球減少を高頻度で認める.
診断
 CD40L-CD40の異常によるものでは,クリプトスポリジウム感染により胆管炎肝癌を発症する.AIDやUNGの欠損症では,クラススイッチは障害されているが日和見感染症はみられない.
治療
 全症例に免疫グロブリン補充療法の適応がある.CD40L異常症の好中球減少症では,G-CSFが有効であることが多い.CD40L-CD40の異常症に対しては,ニューモシスチス肺炎の予防のためST合剤の内服が必要である.CD40L-CD40の異常症の場合,早期の造血幹細胞移植が必要である.[峯岸克行]
■文献
Notarangelo LD, Fischer A, et al: Primary immunodeficiencies: 2009 update. J Allergy Clin Immunol, 124: 1161-1178, 2009.
Ochs HD, Smith CIE, et al: Primary Immunodeficiency Diseases, 2nd ed, Oxford University Press, New York, 2007.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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