改訂新版 世界大百科事典 「マクログロブリン血症」の意味・わかりやすい解説
マクログロブリン血症 (マクログロブリンけっしょう)
macroglobulinemia
免疫グロブリンの一種であるIgM(マクログロブリン)が血清中に多量に出てくる疾患。1944年スウェーデンのワルデンシュトレムJan Gösta Waldenström(1906- )によって最初に記載された。まれな疾患で,40歳以後とくに60歳代にみられ,7対3で男に多い。骨髄,リンパ節,肝臓,脾臓などにリンパ球系異常細胞が増殖し,これらの細胞から単クローン性IgMが産生,分泌される。発病は緩慢で,全身倦怠,めまい,動悸,息切れなどの貧血症状,リンパ節腫張,肝腫,脾腫,出血傾向,レイノー現象などのほか,増加したIgMによる過粘稠度症候群(視力障害,精神症状,意識障害,出血症状,腎不全など)がみられる。また細菌に対する抵抗力が減弱し肺炎その他の感染症にかかりやすい。血清の総タンパク質量は高く,多量の単クローン性IgMが認められるのが特徴である。この異常IgMはクリオグロブリンやピログロブリンの性質をもつものが比較的多い。血清粘稠度は高く,血沈も高度に促進する。慢性に経過し10年以上生存するものもあるが,平均約4年で死亡する。死因は全身衰弱,出血,感染合併症などである。
執筆者:今村 幸雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報