出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
ニューモシスチスは真菌の一種で、ヒトの細胞性免疫が低下状態になった時に、両側性びまん性間質性肺炎として発症します。とくに、抗がん薬治療や副腎皮質ステロイド療法を受けている患者さん、自己免疫疾患、臓器移植、エイズ、先天性免疫不全の患者さんに合併して発症します。
ニューモシスチスは、ヒトの肺に潜在的に寄生していますが、免疫の低下により顕性化し、肺胞内に充満するように増殖します。このため酸素がうまく血液中に取り込めず、低酸素血症が起こってきます。増殖にはⅠ型肺胞上皮細胞の存在が必要とされ、肺以外の病変は極めてまれです。
HIV(エイズウイルス)に感染している患者さんとそうでない患者さん(非HIV)では進行速度に差があり、前者では比較的ゆっくりと進行するのに対し、後者では数日の経過で急速に進行します。
図19に検査と診断のフローチャートを示しました。血液検査では、二酸化炭素の上昇を伴わない低酸素血症、LDH上昇、
確定診断は、
主な治療薬は、ST(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)合剤とペンタミジンです(図19)。治療薬の選択は、基礎疾患や骨髄・肝腎機能にもよりますが、ST合剤が最も有効であり第一選択薬です。ST合剤には経口と経静脈の2つの投与ルートがありますが、注射薬は溶解度の点から多量の水負荷が必要であり、経口投与でも十分な体内移行が得られるため、経口投与が望ましいとされています。
治療期間は3週間が標準です。そのほか、初期からの副腎皮質ステロイドホルモン薬の併用は、予後を改善することが明らかとなっています。
宮下 修行
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