D-フルクトース(読み)フルクトース

化学辞典 第2版 「D-フルクトース」の解説

D-フルクトース
フルクトース
D-fructose

D-arabino-2-hexulose.C6H12O6(180.16).果糖,レブロースともいう.代表的なケトースD-グルコースについで分布が広い.甘い果実,ハチミツ中に遊離状で多量に存在するほか,スクロースなどのオリゴ糖,イヌリンなどの多糖類の構成成分として(いずれもβ-フラノース形),広く植物界に存在する.一般には,それらの加水分解で得られるが,希アルカリによるD-グルコースの異性化など,化学的な合成例も多い.結晶はβ-ピラノース形だけが知られている.融点102~104 ℃.-133.5→-92°(水),pKa 12.03.水中での組成は,α-ピラノース2%,β-ピラノース70%,α-フラノース5%,β-フラノース23%,直鎖ケトン0.7% となる.水に易溶.水酸化カルシウムとは難溶性の付加物C6H12O6・Ca(OH)2・H2Oをつくるので,分離,精製,確認に利用される.糖のうちでもっとも甘味が強い.還元糖としての一般的性質を示す.D-グルコース,D-マンノースと同一のオサゾンを与える([別用語参照]グルコサゾン).水素化ホウ素ナトリウムで還元すると,等モル量のD-マンニトールとD-ソルビトールを与える.臭素水で酸化するとD-アラボン酸を与える.製薬用,医薬用(非経口栄養剤)に用いられる.生体内では1-リン酸,6-リン酸,1,6-二リン酸の3種類のリン酸エステルが知られ,いずれも糖の代謝の重要な中間体である.L-フルクトースは合成品のみが知られている.融点101~103 ℃.+128→+98°(水).[CAS 57-48-7]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のD-フルクトースの言及

【単糖】より

…このうちD‐マンノースD‐mannose(図(2)),D‐ガラクトースD‐galactose(図(5))が特に重要である。また,ケトン基をもつ糖としてD‐フルクトースD‐fructose(果糖,図(7))が知られている。糖の異性体のうちには,水酸基と水素原子の配置が鏡像の関係にある,すなわちまったく逆の二つの糖の組が現れる。…

※「D-フルクトース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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