MOSトランジスタ(読み)もすとらんじすた

日本大百科全書(ニッポニカ) 「MOSトランジスタ」の意味・わかりやすい解説

MOSトランジスタ
もすとらんじすた

電界効果トランジスタ一種陰極に相当するソース陽極に相当するドレイン間の電流通路(チャネル)の電気伝導が、チャネル上の酸化膜を介して接触した第三電極ゲート)の電圧によって制御されるもの。ゲート部分が金属metal―酸化膜oxide―半導体semiconductorの3層からなり、そのイニシアルをとってMOSトランジスタとよばれる。典型的な構造は、p形シリコン(ケイ素)基板の表面近くに二つのn形層をつくってソース、ドレインとし、その間にある基板表面の酸化膜上に電極をつくってゲートとする。ゲートに正の電圧を加えると、正孔はゲートより遠くに追いやられ、最初は電流は流れないが、さらにゲートの電圧を、ある電圧(これを閾値(しきいち)電圧とよぶ)以上にあげると、半導体内の電子がチャネルに集まってきて、電流が流れるようになり、電圧を上げるほど電流が増加する。このように、ゲート電圧の状態によってチャネルの電流が変わるので、増幅作用が得られる。チャネルの電流が電子によるものをnチャネル形、正孔によるものをpチャネル形とよぶ。MOSトランジスタはMOS・IC(集積回路)の構成要素として広く用いられるが、高耐圧、高出力、高周波などに対する単体トランジスタとしての用途も広い。また、ゲートを絶縁膜中に埋め込み、これに電荷を注入できる構造にしたものは、電気的に書き換えができる不揮発性メモリー(電気を切っても記憶が維持される)として知られ、ROM(ロム)(read only memoryの略称)の一種として使われる。

[右高正俊]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 「MOSトランジスタ」の解説

MOSトランジスタ

MOS(金属酸化膜半導体)構造のゲート電極を持つ電界効果トランジスタ。ゲート電圧によりソースとドレイン間の電流を制御し、電気信号の増幅とスイッチングの動作を行う。ゲートとソース間に電圧をある程度以上かけるとオン、それ以下ではオフになる電圧があり、閾値電圧(スレッショルド電圧)と呼ばれる。比較的小さい消費電力で動作し、高密度に集積できるのが特徴。バイポーラ型ほど速くはないが、素子寸法を小さくすることで高速化が可能。今日のVLSIを構成する基本素子として微細化の研究開発が一層進んでいる。

(荒川泰彦 東京大学教授 / 桜井貴康 東京大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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