内科学 第10版 の解説
Crow-Fukase(POEMS)症候群(血漿蛋白異常をきたす疾患)
感覚・運動神経障害をきたす多発末梢神経炎(polyneuropathy),リンパ節や肝脾の腫大(organomegaly),2型糖尿病・甲状腺機能低下・男性の女性化乳房や陰萎・女性の無月経などの内分泌症(endocrinology),M蛋白血症(monoclonal protein)および色素沈着・硬化・剛毛などの皮膚症状(skin change)をきたす骨髄腫の特殊病型で,硬化性骨病変を示すことが多い.これらの症候の頭文字を集めてPOEMS症候群とよばれている.また,報告者の名前を取り,Crow-Fukase症候群あるいは高月病ともいわれる.
病因は不明だが,形質細胞から分泌されるIL-1,IL-6,VEGF,TNFの血中濃度が高値を示し,TGF-βの血中濃度が低下していることが多い.ほとんどがλ型M蛋白を有するが,骨髄中の形質細胞の割合は低い.
慢性的な経過を示し,生命予後は10年間以上と比較的良好であるが,末梢性感覚・運動神経障害が進行すると最終的には寝たきりになる.
標準的治療は確立しておらず,形質細胞腫には摘出や放射線照射,孤立性骨病変には放射線照射,それ以外には副腎皮質ステロイド薬,メルファラン,シクロホスファミドなどの抗腫瘍薬が投与される.自家造血幹細胞移植を併用した大量化学療法やレナリドミドなどが有効な症例もある.一般的に症候性骨髄腫への進行はなく,おもな死因は心肺不全や感染症である.[松永卓也]
■文献
Hanamura I, et al: Frequent gain of chromosome band 1q21 in plasma-cell dyscrasias detected by fluorescence in situ hybridization: incidence increases from MGUS to relapsed myeloma and is related to prognosis and disease progression following tandem stem-cell transplantation. Blood, 108: 1724-1732, 2006.
Harada H, et al: Phenotypic difference of normal plasma cells from mature myeloma cells. Blood, 81: 2658-2663, 1993.
Malpas JS, Bergsagel DE, et al: Myeloma, pp1-581, Oxford University Press, Oxford, 1995.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報