ギンズバーグ(読み)ぎんずばーぐ(英語表記)Morris Ginsberg

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギンズバーグ」の意味・わかりやすい解説

ギンズバーグ
Ginsburg, Ruth Bader

[生]1933.3.15. ニューヨークブルックリン
[没]2020.9.18. ワシントンD.C.
ルース・ベーダー・ギンズバーグアメリカ合衆国の裁判官,弁護士。アメリカ合衆国連邦最高裁判所判事(1993~2020)。ユダヤ教徒の商人を父に,2人姉妹の二女ジョーン・ルース・ベイダー Joan Ruth Baderとして生まれる。生後 14ヵ月のとき,姉が髄膜炎により 6歳で死亡,高校卒業の頃には母を癌で失った。1954年コーネル大学を卒業後,マーティン・ギンズバーグと結婚。その後,育児や癌になった夫の看病をしながら,ハーバード大学ロースクール,転学後はコロンビア大学ロースクールで学んだ。ハーバード大学では法律評論誌『ハーバード・ロー・レビュー』の初の女性編集スタッフとなり,コロンビア大学でも法律誌の編集に携わった。1959年コロンビア大学ロースクールを首席で卒業。傑出した学業成績にもかかわらず,女性であることを理由に何度も就職を断られた。1959~61年ニューヨークの連邦地方裁判所判事の書記を務めたのち,1963~72年ラトガーズ大学ロースクール,1972~80年コロンビア大学で教鞭をとり,コロンビアでは大学初の女性終身教授となった。1970年代にアメリカ自由人権協会 ACLUの女性の権利プロジェクトの責任者を務め,弁護士として性の平等を争点とする重要な訴訟 6件について連邦最高裁判所で争った。6件中 5件に勝訴し,性差別の違憲性を立証することに貢献した。1980年ジミー・カーター大統領によってコロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所の判事に任命された。1993年にはビル・クリントン大統領が,史上 2人目となる連邦最高裁判所の女性判事に指名,連邦議会上院で承認された。最高裁内では,少数派の穏健リベラル派に属した。

ギンズバーグ
Ginsberg, Allen

[生]1926.6.3. ニュージャージーニューアーク
[没]1997.4.5. ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカ合衆国の詩人。詩人で英語教師の父をもつ。コロンビア大学在学中に,ともに 1950年代の文学運動ビート・ジェネレーションを牽引することになるジャック・ケルアック,ウィリアム・S.バローズ親交を結ぶ。1948年以降,広く各地を放浪し,清掃員や市場調査員など数多くの職業に従事する。最初に刊行された詩集『吠える』Howl and Other Poems(1956)は,信ずるものが「時代の良心」なるものの狂気によって破壊されることを嘆く,ウォルト・ホイットマンの影響を受けた熱狂的かつ予言的な作品で,そこには同性愛,薬物中毒仏教,そして彼自身がいだく第2次世界大戦後のアメリカ社会に対する嫌悪感が長々とこめられている。1961年に初期の詩を集めた『うつろな鏡,初期の詩』Empty Mirror Early Poems,精神異常の母とのかかわりやその死について告白した『カディッシ』Kaddish and Other Poemsを発表。1960年代にはサンフランシスコでの自作の朗読会を通じてアメリカの若者が担うカウンターカルチャー(→サブカルチャー)の世界において教祖的存在となった。そのほかの作品に『アメリカの没落』The Fall of America: Poems of These States, 1965–1971(1972,全米図書賞),『白いかたびら』White Shroud: Poems 1980–1985(1986)などがある。

ギンズバーグ
Ginsberg, Morris

[生]1889.5.14.
[没]1970.8.31. ロンドン
イギリスの社会学者。 L.T.ホブハウスの跡を継いでイギリス社会学の主柱をなした。彼の立場は総合社会学であり,いわゆるドイツ系の形式社会学に批判的であり,人間の相互関係をその条件や結果を含めて全体的にとらえることを主張した。主著『社会学研究』 Studies in Sociology (1932) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギンズバーグ」の意味・わかりやすい解説

ギンズバーグ(Morris Ginsberg)
ぎんずばーぐ
Morris Ginsberg
(1889―1970)

イギリスの20世紀前半の社会学界を代表する学者。ロンドン大学でホッブハウスの教えを受け、その学統を継いだ。学会誌の編集に活躍し、イギリス社会学会会長、国際社会学会連合副会長を務め、1955年(昭和30)には来日して東京、京都、仙台の諸大学で講演を行った。社会関係の限定された特殊な側面を扱う特殊科学としての形式社会学を否定し、社会における人間の生活全体の一般的諸条件を対象とする総合社会学を提唱した。しかし、それはかつての百科全書的な総合社会学への逆行ではなく、歴史学、社会人類学、社会心理学などの成果も踏まえて、社会生活の諸構成要素間の相互作用の性質を可能な限り実証的な手法を用いて分析し、それによって全体社会を解釈しようとした。思想的にはラスキ、マッキーバー多元的国家観を踏襲し、人間性の内の合理性と非合理性の葛藤(かっとう)を管理統御して、自由と福祉の増進を目ざす自由主義的ヒューマニストである。主著に『社会学』(1934)がある。

[杉 政孝]


ギンズバーグ(Allen Ginsberg)
ぎんずばーぐ
Allen Ginsberg
(1926―1997)

アメリカの詩人。ロシア系移民の子としてニュー・ジャージー州に生まれる。コロンビア大学在学中に、母親ナオミの知的障害のため一時精神の不安にみまわれる。1948年夏、ニューヨークのアパートでブレイクの詩を読んで以来、幻想的な傾向が強い詩作にふけった。郷里パターソンの先輩詩人W・C・ウィリアムズの忠告をいれて、もっと現実に根ざした詩を志向し、1955年にサンフランシスコに赴き、アメリカ社会の悲惨とビジョンとの葛藤(かっとう)を歌い上げた長詩『吠(ほ)える』(1956)を書いて、ビート世代の指導者的存在となった。以来、ベトナム反戦の運動に携わるなど、絶えず社会の関心の的となる行動をした。詩集『アメリカの没落』(1972)にその政治的側面がよくみられる。しかし本質的には、母親の死を悼んだ『カディッシ』(1961)にうかがえるように、宗教的な予言者詩人で、ホイットマンに似た相貌(そうぼう)を呈している。1988年に来日し、講演と朗読を行った。

[新倉俊一]

『諏訪優著『ビート・ジェネレーション』(紀伊國屋新書)』『諏訪優訳編『ギンズバーグ詩集』増補改訂版(1991・思潮社)』

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