日本大百科全書(ニッポニカ) 「EPレコード」の意味・わかりやすい解説
EPレコード
いーぴーれこーど
extended playing recordの略称。シングルレコード(ドーナツレコード)の演奏時間を延ばす(extend)目的で開発されたレコード。大きさはシングルレコードと同じ直径7インチ(約17センチメートル)。回転数もシングルレコードと同じ毎分45回転であるが、音信号の強さに応じて音溝(おとみぞ)の間隔を変える可変ピッチとよばれる方法を採用するなどのくふうを行って、演奏時間を延ばした。シングルレコードでは、演奏時間は片面約5分で、ポピュラー曲1曲の収録が普通であるが、EPレコードでは片面8分程度に延ばし、2~3曲を収録することができる。中心孔の大きさはシングルレコードと同じ38ミリメートル径のものと、LPレコードと同じ7.2ミリメートル径のものがある。日本ではシングルレコードも一括してEPレコードとよばれることがあるが、これは誤りである。誤用が生じた原因の一つに、シングルレコードまたはシングル盤という呼び方は便宜上の通称にすぎず、これに正式名称が与えられていなかったことがあると考えられる。
EPレコードと同じ寸法で、回転数をLPレコードと同一の毎分33と3分の1回転に落として演奏時間をさらに長くしたものは、コンパクト盤とよばれる。中心孔の大きさはLPレコードと同じ7.2ミリメートル径である。実質的にLPレコードの内周部を使うことになるため、音質はEPレコードに比べて劣ったが、好きな曲を安価な値段で聞くことができるため、音質にあまりこだわることのないユーザーには歓迎された。
EPレコードやコンパクト盤に収録された内容は、ポピュラー曲のほかに演奏時間の比較的短いクラシック音楽、さらに蒸気機関車の走行音や野鳥のさえずりなど音楽以外の音もあり、広範囲にわたった。しかし、LPレコードやシングルレコードと同様に、コンパクトディスク(CD)が発売され始めた1980年代以降、生産枚数は激減した。
[吉川昭吉郎 2019年9月17日]