内科学 第10版 「Meckel憩室」の解説
Meckel憩室(先天性腸疾患)
概念
卵黄腸管遺残による回腸遠位側にみられる憩室であり,先天性腸疾患のなかでも頻繁にみられる疾患である.憩室は腸間膜付着側の対側にあり,異所性胃粘膜を有するため出血によってはじめて発見されることが少なくない.また,腸重積の原因となり,憩室の頂点から腸間膜に付着するmesodiverticle bandによる絞扼性イレウスの原因ともなる.
診断
99mTc-pertechnetateによるシンチグラム(Meckel憩室シンチグラム)によって集積がみられることにより診断可能であるが,必ずしも全例に描出されず,数回の検査によってはじめて描出される例もある(図8-5-10).また,熟練した放射線診断医による小腸透視により憩室が描出されることもある.外科手術に際して偶然発見されることも少なくない.
臨床症状
下血,腸重積,イレウス,憩室炎などの症状がなければ無症状で経過する.下血はしばしば大量で,ショック状態に陥ることもあり,若年者の下血には常に本疾患を念頭におく必要がある.また,好発年齢以外でみられる腸重積や,手術既往のないイレウスの場合にもMeckel憩室を原因として考慮する.Meckel憩室炎はしばしば急性虫垂炎と鑑別が困難な場合があるが,本疾患の場合には圧痛部位はしばしば下腹部正中であり,腹部超音波エコー検査およびCT検査が有用である.
治療
開腹あるいは腹腔鏡による憩室切除あるいは憩室を含む腸管部分切除が行われる.憩室粘膜は異所性胃粘膜であるため,切除標本の断端検索は必須である.[森川康英]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報