病理学的には、内腔(ないくう)の異常を呈する形態異常の一種と定義されているが、臨床的には、内腔臓器の限局性の拡張をさし、食道、小腸、大腸、膀胱(ぼうこう)などに認められる憩室が問題とされる。食道憩室には、括約筋の発育不良、嚥下(えんげ)時の損傷などに食道内圧の上昇が加わって食道上部後壁におこる憩室と、食道周囲の炎症、癒着に牽引(けんいん)されて食道の前壁におこる憩室とがある。小腸憩室は、小腸の大腸移行部にある回盲(かいもう)弁から、口側に向かって約1メートルほどの、小腸の腸間膜付着部の反対側に発生するものが多く、メッケルMeckel憩室とよばれる。これは、胎生期の臍(さい)腸管の一部が閉鎖しないまま残ったものである。
大腸憩室では、S字状結腸、下行結腸に多発し、老年男性の肥満者に多い。とくにS字状結腸にみられるものはグラーセルGraser憩室とよばれている。膀胱憩室は、膀胱筋層の発育不全、尿うっ帯による内圧上昇によって生ずるものである。いずれの憩室も、内容の停留、憩室炎、穿孔(せんこう)をおこす可能性があり、場合によっては外科的に切除する。
[渡辺 裕]
…また慢性小腸炎とは臨床的に慢性下痢,腹痛,消化不良症状を示すものをいうが,これも急性症同様概念はあいまいで,詳細に検討すれば別の病名で呼ばれる可能性も大きい。(2)小腸の憩室 憩室diverticulumとは臓器の輪郭外に膨れだした袋状の構造をいい,通常みられるのは筋層のすきまから粘膜,粘膜下層が風船のように膨れだしたものである。十二指腸中部内側は非常に憩室の多いところで,検査を行うと5%くらいの頻度でみられる。…
※「憩室」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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