化学辞典 第2版 「T-50試験」の解説
T-50試験
ティーゴジュウシケン
T-50 test
ASTM(American Society for Testing and Materials)に規定されるT-50試験は,常温で延伸した加硫ゴムの試験片を低温にして弾性を失わせた後,そのまま徐々に昇温し,もとの弾性を回復するときの温度を測定して加硫の度合を判定する試験である.同一組成の配合物においては,化学的に加硫の程度を判定する結合硫黄量と定量的な相関性があるが,異なる配合物のものでは,定性的な関係しかない.T-50値はその値が伸びに対して一定になる必要があり,それに必要な伸びは,ゴム純度の低いカーボン配合では350%,純ゴム配合では650%,500%(老化後),ラテックス配合では700% である.配合物の組成によって上記のように伸びの大きさが異なるため,実際にはT-50値を求める点の試験片の長さは
L50 = (L0 + L1)/2
より計算される.ここで,L0 は延伸しないときの試験片の長さ,L1 は延伸したときの試験片の長さ,L50 はT-50値を求める点の試験片の長さである.T-50試験には,A,B二法がある.B法は,糸ゴム,ゴム薄膜などに適し,20試料まで同時に測定が可能であるが,各試験片がほぼ同じ延伸倍率でなければいけない.それに対して,A法は,別々に試験片をセットするため,伸びの異なる試験片も同時に測定できる.T-50試験は加硫ゴムの物理試験の一つである加硫度を評価するものであるが,加硫ゴムの性質はそのほか,摩耗性,圧縮たわみ,屈曲によるき裂の発生と成長性,繰返し圧縮による発熱・疲労性,屈曲のヤング率,圧縮自由振動による弾性などの試験によって検討することができる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報