ラテックス(読み)らてっくす(英語表記)latex

翻訳|latex

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラテックス」の意味・わかりやすい解説

ラテックス
らてっくす
latex

平均粒径1マイクロメートル程度の微粒子ゴム水中に分散した乳濁液である。天然ゴムと合成ゴムラテックスがある。天然ゴムラテックスパラゴムノキ樹皮に傷をつけて採取される乳液であり、ゴム炭化水素35~40%とタンパク質、脂肪酸、糖類それぞれ1~2%を含む。ゴムの微粒子は負に帯電し、等電点が4.8であり、酸性にすると凝固して生ゴムが分離する。自然にも酵素の作用などで凝固しやすいので、保存剤としてアンモニアを0.6%加える。輸送のためにゴム分を60~70%含む濃縮ラテックスとする。皮膜形成能がよく乾燥皮膜は高い弾力性と強さをもつので、糸ゴム、ゴム手袋、フォームラバー、医療衛生用品、接着剤、カーペット、道路舗装などの用途がある。各種合成ゴムラテックス乳化重合によって製造されるほか、溶液重合の溶液を乳化剤とともに水中に分散してつくられる。合成ゴムラテックスは天然ゴムラテックスより多量に消費され、なかでもSBRスチレン・ブタジエンゴム)ラテックスが多く、紙加工、繊維処理、道路舗装、プラスチックの改善、塗料、接着剤などに用いる。BRブタジエンゴム)ラテックスはABS樹脂のべースポリマーとして、NBRアクリロニトリル・ブタジエンゴム)ラテックスは繊維処理、CRクロロプレンゴム)ラテックスは、特殊紙加工などの用途がある。合成ゴムラテックスは乳化重合でつくられることが多いので、エマルジョンとよばれることもある。

[福田和吉]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラテックス」の意味・わかりやすい解説

ラテックス
latex

ゴムのコロイド状水分散物をいう。天然ゴムラテックスはゴム樹の樹皮を傷つけて流出する乳液である。採集したラテックスはゴム分約 30~40%であるため,消費地に送られるものは普通遠心分離またはクリーミング方法により 60%以上に濃縮されている。自然凝固を防ぐため通常 0.7%程度のアンモニアが加えられている。最近はアンモニアを 0.2%程度にし,他の保存剤で置換したものが市販されている。前者を高アンモニアラテックス,後者を低アンモニアラテックスと呼んでいる。合成ゴムラテックスは,乳化重合の場合にはそのままラテックスになるが,溶液中で重合の行われるイソプレンゴムのような場合には界面活性剤と水が加えられ,攪拌してエマルジョン (乳濁液) とし,溶剤を除去してラテックスがつくられる。

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