日本大百科全書(ニッポニカ) 「VRE院内感染」の意味・わかりやすい解説
VRE院内感染
ぶいあーるいーいんないかんせん
従来の特効薬が効かない耐性菌の一種、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)による院内感染。腸球菌はもともと腸内菌で毒性も強くないが、抵抗力のない人の血液や膀胱など腸外でふえると症状がでる。いわゆる日和見感染の一種である。1998年7月、九州の病院で手術後の敗血症で亡くなった60歳代男性が日本では8人目のVRE感染者で、初めての死者として話題になった。バンコマイシンは、ペニシリン耐性菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を30年もおさえてきたもっとも強力な抗生物質で、VREはバンコマイシンに構造の似た薬、アボパルシンが鶏用に大量に使われた結果生まれた耐性菌とされている。世界的には1988年ヨーロッパで初めて見つかっており、欧米ではかなり広がっている。
[田辺 功]