改訂新版 世界大百科事典 「アナハゼ」の意味・わかりやすい解説
アナハゼ
Pseudoblennius percoides
カサゴ目カジカ科の海産魚。ハゼの名がついているが,腹びれが吸盤状でないことや骨格のうえからもハゼの仲間とは縁遠い。日本各地の沿岸域に分布し,岩礁や潮だまりの岩陰などで生活する。口が大きく,体にうろこがないこと,また側線が波状であるのが特徴。全長20cmになる。体色は生息場所によって異なるが,背面が褐色で,側面から腹面にかけて徐々に白っぽくなるのが一般的である。また,体の背面や側面には不規則な暗色横帯や暗褐色斑がある。雄には肛門の前に円筒状をした大きな交接器があり,近縁種のアサヒアナハゼP.zonostigmaの例では雌の体内から受精卵が認められているので,アナハゼも交尾を行って体内受精をするのであろう。12月ごろに卵塊を産み,雄がこれを保護して孵化(ふか)させる。孵化後しばらくして表層や中層を自由に泳ぐようになる。肉はおいしくないので,ふつうは食用としない。
執筆者:谷内 透
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報