日本大百科全書(ニッポニカ) 「おじ・おば」の意味・わかりやすい解説
おじ・おば
おじおば
一般には父母の兄弟姉妹の称呼であるが、それとは別に、未婚のまま生家に同居して一生を終える境涯の男女を「オジ・オバ」とよぶこともあり、オンツァマ、オジボー、イカズゴケ、イエオジなどその方言も多様である。村内に分家独立する余地も乏しく、他郷移出の可能性もなかった旧時の山村には、こうした生涯を送る男女も多く、終生生まれた家にとどまって「跡とり」の兄弟といっしょに家業に携わった。多少のホマチ(私財)はもつことができても、経済的に自立できぬまま、村内で多少は性的交渉をもつことはあっても同居して世帯を構えることはできなかった。そして「福の神」という別称さえあって、オジ・オバのいる家は働き手が多く豊かになるともいわれた。飛騨(ひだ)白川谷の大家族もこの慣習に根ざすところで、ただここではオジとオバの通婚が公認されていた。しかし世帯の別立は不可能なまま、子女は母方の家族に組み込まれ、それが世代的にも累積して数十人の大家族ともなった。現在こうした境涯の男女はほとんどなくなった。なお、親族名称のおじ(伯父・叔父)・おば(伯母・叔母)は、父母の兄・姉には「伯」、弟・妹には「叔」の字をあてる。
[竹内利美]