改訂新版 世界大百科事典 「甥姪」の意味・わかりやすい解説
甥・姪 (おいめい)
おい・めいは傍系親族の一種であり,かつてはこれを家族成員として含む家族も分家が顕著に行われた地域で多く見られたが,現在は核家族化の進行にともなって著しく減少した。しかし今日でもおい・めいは財産相続が行われる法的関係としてではないが,社会生活において重要な役割を占めており,なかでも通過儀礼におけるおい・めいとおじ・おばの関係が注目される。婚姻儀礼においてはおじ・おばがおい・めいの仲人的役割を果たすのに対して,おい・めいはおじ・おばの死にあたって主として棺かつぎの役割を果たす。通過儀礼は人間成長のある段階から次の段階への移行時に行われる儀礼であり,人間の成長の重要な時期におじ・おばとおい・めいは相互に橋渡し的な役割を演ずることになる。またおじ・おばとおい・めいの間はしばしば結婚が行われる関係としても重要である。法律的にはこの間の結婚は近親婚として否定されていたが,東北地方を中心としてかつて行われたことがあった。さらにおじ・おば,おい・めい間では家産の相続がなされることはなかったが,とくに五島列島などにおいては個人名の継承が見られた。おい・めいに個人名を継承することを通じて双性的な親類関係の強化がはかられた。このようにかつて兄弟が多かった時代にはおい・めいは生活の諸場面において重要な役割を果たしていた。
→おじ・おば →親族
執筆者:上野 和男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報