分家(読み)ぶんけ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「分家」の解説

分家
ぶんけ

家族員が分離して新たな家族を創設する行為,およびそれによって形成された家族をいう。しかし家族員の分離がすべて分家とはならないし,また分家行為に基づかない分家もみられた。分家は承認を得なければ新しい家の成立とみなされず,また転入した家が社会生活の必要上,ほかの家と本家分家関係を結んで成立する分家もあった。分家は地域によって,バッカ,ワカサレ,シンヤ,シンタク,カマドなどと呼ばれる。日本の分家には4つの形態があり,最も多い例は2,3男の分家である。第2は親が2,3男を連れて,あるいは2,3男が親を連れて分家する隠居分家である (→隠居制 ) 。第3は娘が婿養子をとって分家する婿養子分家,第4は奉公人の分家であり,農家のみならず商家にもこの形態はしばしばみられた (→別家 ) 。また分家には本家から相当の財産を分与される場合と,分家者が長年にわたるかせぎに基づいて分家する場合がある。前者は分家後も本家の生活援助が必要であり,本家に対して従属的な分家となり,後者は本家から独立した分家となった。本家分家の上下的な関係を基盤として形成される同族の組織は,従属的な分家の場合が多かった。また本家分家の関係は,永続的なものもあったが,多くは2,3代でその関係も不明確になっていった。

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精選版 日本国語大辞典「分家」の解説

わけ‐や【分家】

〘名〙 分家(ぶんけ)のこと。

ぶん‐け【分家】

〘名〙
① 家族の一員が、その家を離れて、別に一家をたてること。また、そのたてた家。
※地方凡例録(1794)七「久離とは不相成従弟等にても本家より分家を勘当いたすは不苦」
② 特に民法旧規定で、家族中のある者が戸籍上、家から分かれて別に一家を設立する法律行為。また、その設立した家。
※民法(明治三一年)(1898)七四三条「家族は戸主の同意あるときは他家を相続し、分家を為し」

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デジタル大辞泉「分家」の解説

ぶんけ【分家】[書名]

伊藤左千夫による自伝的小説。著者唯一の長編小説で、明治44年(1911)3~7月に正編、明治45年(1912)3~7月に続編を、いずれも「東京日日新聞」に連載九十九里農村舞台に、農家の次男青年苦難、村の中での立場を築き上げる姿を描く。

ぶん‐け【分家】

[名](スル)家族の一員が、その所属していた家から分かれて新しく一家を構えること。また、その家。民法旧規定では、本家に従属する関係にあったが、現在は法律的意味はない。別家。「土地をもらって分家する」⇔本家
[補説]書名別項。→分家

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世界大百科事典 第2版「分家」の解説

ぶんけ【分家】

一般にある家族に属する家族員が分離して新たな家族を創設する分家行為によって形成された家族をいう。しかしながら日本では家族員の分離のすべてを分家と呼んできたわけではないし,分家行為によらない分家の例もしばしばみられた。分家はまず単なる家族員の分離ではなく,新たな家族の形成が社会的に承認されなければならない。村落社会においてはとくにこれが重要であって,社会的承認を得るための村への挨拶など数々の手続がみられた。

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世界大百科事典内の分家の言及

【家】より

…生活保障のため血縁の擬制,拡大が行われるのである。血縁の拡大は,個々の家内部はもとより,家と家の連合,たとえば本家・分家の同族団の強化にも機能した。草鞋(わらじ)脱ぎ分家,雇人分家などがそうである。…

【おじ・おば(伯父・伯母∥叔父・叔母)】より

…中部地方などでも相続人以外の男子や女子は壮年になっても独立の家の主人・主婦とはなりえず,オジ・オバと呼ばれて終生生家に残留することも見られた。これらの地方では条件が整えば分家して本家との間に本分家の系譜関係にもとづく同族を形成し,本家のいわゆる権威的統制の強い生活組織をつくり出す例がしばしば見られたが,これは家族における兄弟姉妹序列の原理が家々の関係へと拡大されたものにほかならなかった。とりわけこのような兄弟間の序列が厳しい社会では,やがて相続人となるべき長子とそのほかの子どもとでは養育の仕方に差があり,長子は将来の家の相続者として,自他ともにその意識をもち家族内の位置にもそれにふさわしいものがあった。…

【親分・子分】より

…生みのオヤが有力な家の家長やその妻やアトトリにオヤとなってもらって,無力な家に生まれた子がそのコ(子分)となる社会的事実は,ムラやマチの慣習や儀礼におけるオヤコナリ(親子成り)の仕方に見いだされた。家の内では家長と家の成員の関係としてのオヤコに,子方・子分・子供衆(商家の住込み子飼いの丁稚(でつち))もまた子と同様にコとして含まれる点に注目すべきで,家の拡大展開による本家分家(親族分家と非親族分家=奉公人分家,別家ともいう)の関係においてもこの原則はあった。本家・分家間の同族の関係は,明治の民法以来,法律上本家・分家とされたものとは違って,親子や養親・養子,また嫁・婿の範囲に限定されず,同族関係とオヤコ関係(親分・子分関係)が合致していたのが原型であり,のちに両者が分化された。…

【家族主義】より

…非血縁者を親族として養取することが多かっただけでなく,この種の雇人としての養取も,家の傍系(非嫡系)成員の一種とされた。彼ら住込み奉公人が主家で成人し,生家からではなく主家から分家(奉公人分家)させてもらって,傍系の親族成員(家族員)だった者の分家(親族分家)とともに,主家だった本家の分家として同族を構成した。住込み奉公人は住込み奉公中に能力により淘汰選抜されたから,奉公人分家を同族に含むことは,中国の宗族とは違って,実力主義の能力ある非血縁分家の起用を可能とした。…

【近世社会】より

…領主層の知行は,将軍代替りごとに渡される知行状によって,はじめて安泰が確かめられることになった。この性質は,大名領における万石以上の分家が,大坂の陣までその代の当主が武勲を立てた外様の大名にあっては幕府の特別の許可によって認められ,あるいは知行状を外れた新田のみに認められる,ということともかかわるものといえる。大名分家の幾つかは,主藩の後嗣に立つことによって廃止されているが,これも大名所領が私領としての性質を失ったことからくるものであろう。…

【祖先崇拝】より

…非血縁者であってもその社会で認められた方法で養子となれば,養取者との間に正規の親子関係を成立させたことになり,養取者を通して養取者の〈先祖〉と〈先祖〉―〈子孫〉関係をもつことができる。非血縁者を分家とした場合も同様に,この擬制的親子関係を通じて,分家は集団の〈先祖〉の〈子孫〉となるのである。いずれの場合にせよ,父系(的)社会における〈先祖〉と〈子孫〉の原型的関係は父と子の関係である。…

【同族】より

…本家とその親族分家や奉公人分家,また直接分家だけでなく間接分家(分家の分家,すなわち孫分家とか又分家と呼ばれた家)をも含む組織集団。農山漁村社会でマキ,マケ,マツイ,カブウチ,イッケ,クルワなどとも呼ばれ,商人社会ではノーレンウチなどとも呼ばれた。…

【分知】より

…所領の一部を親族に分与することを指し,分地とも書く。ことに,江戸時代の武士は上級領主(将軍または大名)より所領を宛行(あてが)われたが,500石位以上の所領を有する武士は家名永続のため分家を創出するのが一般的であった。その際自己の所領の一部を分与し,独立した武士として幕府や藩に仕えさせるが,この分家を分知配当による分家という。…

【村入り】より

…他所から移住してきた家や村内で新たに分家した家がムラ(村)の成員となるために行う儀礼や手続。またムラにすでに存在する家へ婿養子に来たり,嫁入りしてきた者がムラの成員となる披露の儀礼もいう。…

※「分家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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