たとえば、Aがその所有物を一方でBに売却しながら、他方ではCにも売却するというように、同一物につき2個以上の売買契約をすることをいう。わが国の民法は、現存する特定物の売買では、当事者の意思表示のみにより物権変動の効力を生ずるものとしているので(176条)、所有権移転の効果は原則として売買契約時に生ずることとなる。したがって、同一物につき二重に売買がなされれば、それぞれの売買契約時において二重に所有権が譲渡されたこととなる。しかし、意思表示のみによって効力を生じた物権変動も、不動産であれば登記(民法177条)、動産であれば引渡し(同法178条)がなければ、第三者に対して対抗力を有しない。すなわち、不動産の二重売買では登記、動産の二重売買では引渡しを受けなければ、買い主は完全な所有権を取得できないわけである。
[竹内俊雄]
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