対抗要件
たいこうようけん
すでに成立した権利関係を他人に対して主張するために必要とされる法律要件。その主要なものは、不動産物権の得喪・変更における登記(民法177条)である。たとえば、土地の買い主は、売り主やその相続人に対しては登記がなくても自分が所有者となったことを主張できるが、第三者に対しては、登記をしなければ所有権の取得を主張できない。このように、当事者間で効力の生じた法律関係を第三者に主張するための要件を対抗要件という。対抗要件は、権利関係を主張するための要件であるにとどまり、権利発生のための要件とは異なる。このような対抗要件としては、不動産物権の得喪・変更における登記のほか、次のようなものがある。動産物権の譲渡における引渡し(同法178条)、指名債権譲渡における通知・承諾(同法467条)がその例である。そのほか、自動車の所有権および抵当権の得喪・変更における登録(道路運送車両法5条1項、自動車抵当法5条1項)、所有権保存登記がすでになされている建設機械の所有権および抵当権の得喪・変更における登記(建設機械抵当法7条1項)、農業用動産の抵当権の得喪・変更における登記(農業動産信用法13条1項)などがある。なお、農業用動産の抵当権の得喪・変更は、それを知っている第三者に対しては登記なしに主張することができる(同条同項)。
[高橋康之・野澤正充]
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対抗要件【たいこうようけん】
当事者間で効力の生じた権利関係を第三者に主張するための法律要件。これを欠くときは第三者は法律関係の成立を否認し得る。不動産物権変動における登記,動産物権の譲渡における引渡し,債権譲渡における通知・承諾などその例が多い。公示して取引の安全を図ることが目的。
→関連項目公示の原則|債権譲渡|売買|不動産|不動産登記
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たいこう‐ようけん タイカウエウケン【対抗要件】
〘名〙 当事者間で効力の生じた権利関係を第三者に対して主張するための法律的要件。不動産を売買したときの登記、動産を譲り受けたときの引渡しなどで、これを欠くとき、第三者から法律関係を否認されるおそれがある。
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たいこう‐ようけん〔タイカウエウケン〕【対抗要件】
当事者間で効力の生じた法律関係または権利関係を、第三者に対して主張するための要件。不動産物権の得喪・変更における登記など。
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たいこうようけん【対抗要件】
すでに効力の生じている事実または法律関係を第三者に主張するために必要な要件のことをいう。たとえば,不動産所有権がAからBに移転した場合に,Bが自己に所有権が帰属した旨を当事者たるAB以外の第三者に主張するために行われる登記などがそれにあたる。対抗要件の具備によって,第三者に対し事実または法律関係の存在を主張しうる効力を対抗力という。対抗要件は成立要件とは異なり,これを欠いても事実または法律関係の成立は妨げられない。
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世界大百科事典内の対抗要件の言及
【指名債権】より
… 指名債権には原則として譲渡性がある(民法466条1項)。問題の一つは,譲受人が債務者に対して,債権者から債権を譲り受け,債権者となったことを主張(対抗)するには,いかにすればよいかという点である(債務者に対する対抗要件)。債権譲渡は,債権者(譲渡人)と譲受人の間の契約によってなされ,債務者はこれに関与しない。…
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