二重(読み)フタエ

デジタル大辞泉 「二重」の意味・読み・例文・類語

ふた‐え〔‐ヘ〕【二重】

二つ重なっていること。また、そのもの。にじゅう。「ひもを二重に掛ける」
「二重まぶた」の略。
腰が折れ曲がること。
「いといたう老いて―にてゐたり」〈大和・一五六〉

に‐じゅう〔‐ヂユウ〕【二重】

同じことが二つ重なること。「おめでた二重になる」
同じものが二つ重なること。ふたえ。「物が二重に見える」
二重舞台」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「二重」の意味・読み・例文・類語

に‐じゅう‥ヂュウ【二重】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 二つ重なっていること。二つ重ねてあること。また、そのもの。ふたえ。
    1. [初出の実例]「旨ふもあるまいが此重箱へ詰めて置たから、二重(にジュウ)とも土産に持って帰り、内の奉公人にでも喰はしてやってください」(出典怪談牡丹燈籠(1884)〈三遊亭円朝〉一九)
  3. 同じ事柄などが二度重なること。重複
    1. [初出の実例]「ことばをいひ、次第取て、又言葉をいふこと、二ぢうに成所を知るべし」(出典:申楽談儀(1430)能の色どり)
    2. 「夫を二重の証文を入て借て、今ちょうど十八両になっているが」(出典:洒落本・嘉和美多里(1801))
  4. 菓子を台に盛ったもの。年始・元服・婚礼、また、犬追物などの時、神前に供えた。
    1. [初出の実例]「御座敷たて物の事 二重二合置鯉(おきこい)二つ置」(出典:料理切形秘伝抄(1642‐59頃)包丁秘密)
  5. にじゅうぶたい(二重舞台)」の略。
    1. [初出の実例]「造り物、三間の間、金襖二重」(出典:歌舞伎・幼稚子敵討(1753)六)
  6. 音域および旋律型を表わす語。仏教音楽の声明(しょうみょう)で音域を三つに分けた中間の高さの音域。初重・二重・三重の順で高くなる。また、平曲謡曲で、中音域のことをいうことがある。平曲では普通二重の代わりに中音という。
    1. [初出の実例]「吟下即時調子第二重五音也」(出典:魚山私鈔(1496))

ふた‐え‥へ【二重】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 二つかさなっていること。二つかさねてあること。また、そのもの。にじゅう。
    1. [初出の実例]「衣こそ 赴多幣(フタヘ)も良き さ夜床を 並べむ君は 恐きろかも」(出典:日本書紀(720)仁徳二二年正月・歌謡)
  3. 二つに折れ曲がること。腰が折れ曲がるさまにもいう。
    1. [初出の実例]「いといたう老いて、ふたへにてゐたり」(出典:大和物語(947‐957頃)一五六)
  4. ふたあい(二藍)
    1. [初出の実例]「墨染めにあけの衣を重ね着て涙の色のふたへなる哉〈大中臣輔親〉」(出典:後拾遺和歌集(1086)雑一・八九二)
  5. ふたつぎぬ(二衣)
  6. ふたえおりもの(二重織物)
    1. [初出の実例]「二重三重の織物・うち物」(出典:増鏡(1368‐76頃)六)

ふた‐し‐え‥ヘ【二重】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「し」はもと強めの助詞 ) =ふたえ(二重)
    1. [初出の実例]「いかでかく心ひとつをふたしへにうくもつらくもなして見すらん〈伊勢〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)恋一・五五五)

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改訂新版 世界大百科事典 「二重」の意味・わかりやすい解説

二重 (にじゅう)

日本音楽の理論用語声明(しようみよう)で,低,中,高の三つの音域を区別して,初重,二重,三重という。たとえば3オクターブに及ぶ五音ごいん)の並びについて,宮(きゆう)~羽(う)をひとまとまりとして中間の音域のものを二重といい,また同一詞章による短い旋律を,段階的に音高と気分を高揚させながら3度唱える場合の2度目をいう。後者の二重は,初重,三重との音程関係が確定している場合と,していない場合とがある。その二重がさらに発展した例は,講式に見ることができる。すなわち,初重と三重との中間の音域で作曲されて楽式上のひとまとまりとなっている部分であるが,講式の二重は,音域のほかにもはなやかな旋律であるのが特徴で,淡々と続いてきた初重のあとに配されて,はっきりした音楽上の転換をもたらすのに効果を生んでいる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「二重」の意味・わかりやすい解説

二重
にじゅう

日本音楽の用語。本来3声域の中間のオクターブを意味し,初重 (しょじゅう) と三重との間に位するが,仏教声楽の声明において,特に講式などでの実際ではオクターブに広がらず,中間の音域の核音の間をいう。なお,講式では,この音域による楽曲構成部分の単位名称ともなり,その全体の旋律の形態特定の類型をもつ。

二重
にじゅう

演劇用語。「二重舞台」または「二重屋台」の略称。平舞台の上にさらに高くしたもの。

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世界大百科事典(旧版)内の二重の言及

【大道具】より

…大道具師の祖といわれるのは江戸日本橋の宮大工の子,初世長谷川勘兵衛(?‐1659)で,その後世襲した代々の勘兵衛によって技術は急速に進歩して現在に及んでいる。 歌舞伎の大道具は,基本的には〈二重(にじゆう)〉と〈張物(はりもの)〉の二つで構成される。二重とは舞台の床と平行で一段高い,家屋,土手,山などの土台を作る台のことで,高さによって常足(つねあし),中足(ちゆうあし),高足(たかあし)などの種類がある。…

【歌舞伎】より

… 大道具小道具も,特殊な例外を除いては写実を避け,様式性を重んじて製作される。定式(じようしき)の大道具の基本は〈二重〉と〈張物〉から成り立っている。〈二重〉は高さに4段階があり,〈高足(たかあし)〉〈中足(ちゆうあし)〉〈常足(つねあし)〉〈尺高(しやくだか)〉と呼ぶ。…

※「二重」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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