あえか(読み)アエカ

デジタル大辞泉 「あえか」の意味・読み・例文・類語

あえか

[形動][文][ナリ]
か弱く、頼りないさま。きゃしゃで弱々しいさま。
「まだいと―なる程もうしろめたきに」〈藤裏葉
光や音など自然のものや、夢・希望などが、はかなげで美しいさま。「あえかに咲く花」
冬枯木立―になまめかしうしろに朝の歩み寄る時」〈晶子・晶子新集〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「あえか」の意味・読み・例文・類語

あえ‐か

〘形動〙
① 触れれば落ちるようなさま。危なっかしい様子。
源氏(1001‐14頃)若菜上「まだいとあえかなる御ほどに、いとゆゆしくぞ、誰も誰もおぼすらむかし」
容姿気持などがかよわく、なよなよとしたさま。きゃしゃであるさま。ふつう若い女性に関して用いられ、上品で美しいという感じを伴って用いられることが多い。
※源氏(1001‐14頃)夕顔「はなやかならぬ姿、いとらうたげにあえかなる心ちして」
③ 自然の景物や夢、希望などのはかなげで美しいさま。
※晶子新集(1917)〈与謝野晶子〉「冬枯の木立あえかになまめかし後(うしろ)に朝の歩み寄る時」
[語誌](1)こぼれ落ちる意のアユから派生した語か。「源氏物語」とその影響を受けた平安後期物語の散文中では、結婚や出産に耐え切れない幼さ、性格的な頼りなさ子供っぽさ、身体の小柄なさま、病でやつれた細さなどを形容し、心身が成熟した女性の標準から欠けた状態にある不安定さを表わしている。
(2)明治三〇年代になって与謝野晶子などによって甦り、美文的な雅語として韻文などに用いられ、さらに現代では女性の描写よりは光や音、声などのかすかなことの形容として用いられている。

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