いっそ(読み)イッソ

デジタル大辞泉 「いっそ」の意味・読み・例文・類語

いっそ

[副]《「いっそう(一層)」の音変化という》
中途半端な状態を排して思いきったことを選ぶときに用いる。とやかく言わないで。むしろ。いっそのこと。「そんな絵ならいっそ掛けないほうがましだ」
予想に反した事を述べるときに用いる。かえって。反対に。「近ごろは角帽をかぶった学生のほうがいっそ異様だ」
好ましいものをあきらめ、意に添わないことを選ぶときに用いる。どうせ。
一木もやどりのたよりならねば、―にぬれた袖笠」〈浮・一代男・一〉
まったく。たいそう。
「大屋さんのおかみさんへ―追従ついしょうばかりいって」〈滑・膝栗毛発端
[類語]むしろかえって

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精選版 日本国語大辞典 「いっそ」の意味・読み・例文・類語

いっ‐そ

〘副〙 (副詞「いっそう(一━)」の変化した語か)
① あれこれと考えた末、それらとは一段違ったことを思い切って選ぶ気持を表わす。思い切って。いっそのこと。
※仮名教訓(室町後)「きやうによりかたくななるもいかが。しからばいっそあなたへもさやうの心得有べし」
※二百十日(1906)〈夏目漱石〉三「どうだらう、いっそ、さうしたら」
② 好ましいものをあきらめて意に染まないものを選ぶときの、投げやりな気持を表わす。どうせだめなら。ままよ。えいもう。いっそのくされ。
※浮世草子・好色一代男(1682)一「一木も舎(やど)りのたよりならねば、いっそにぬれた袖笠」
物事の、ある極端な状態を挙げて強調する、または一方を捨てて他方を選び、それを強調する気持を表わす。むしろ極端に言えば。
浄瑠璃仮名手本忠臣蔵(1748)七「由良殿が躰御らうじたか。〈略〉ありゃいっそ気違ひでござる」
破戒(1906)〈島崎藤村〉一五「明治生れの人間の耳には寧(イッソ)異様に響くのである」
④ 物事の程度がはなはだしいさまを表わす。たいそう。ずっと。
洒落本南閨雑話(1773)怖勤の体「茶もいっそぬるくなりいした」

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