ハナシャコ(読み)はなしゃこ

改訂新版 世界大百科事典 「ハナシャコ」の意味・わかりやすい解説

ハナシャコ (花蝦蛄)
Odontodactylus japonicus

口脚目ハナシャコ科の甲殻類。体長15cmくらい,やや大型の美しい色彩を帯びたシャコ。体の背面は滑らかで,アーチ状をしている。捕脚の指節の基部は膨れ,その内面に5~7の小棘(しようきよく)がある。第6腹節と尾節に多くの縦の隆起線がある。シャコ類ではふつう,体色などで雌雄を分けることが困難であるが,この類では珍しく雌雄で体色が異なっている。雄の体背面は全体に褐紅色をしているが,雌では体の前半が褐紅色,後半が藍緑色をしている。本州中部以南より,南シナ海,インド洋,セーシェル諸島に分布し,浅海から少し深所まで生息する。近似種のモンハナシャコO.scyllarusは体長10cmくらい。紀伊半島,鹿児島県沿岸よりインド洋・太平洋海域に広く分布する。体の背面は褐紫色または濃緑色,頭胸甲の側部に10個ほどの暗色の丸い斑紋があり,尾節と尾肢は濃藍色または濃緑色をしている。捕脚の指節の外側と付属肢周縁には美しい赤紅色の毛を生じている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハナシャコ」の意味・わかりやすい解説

ハナシャコ
Odontodactylus japonicus

軟甲綱口脚目ハナシャコ科。体長 15cm。頭胸甲,腹部とも背面はなめらかで,額棘を欠く。眼は球形。捕脚(第2胸脚)の指節基部がふくれ,内縁に 5~7個の側歯をもつ。雄は背面全体が紅褐色,雌は前半部紅褐色,後半部藍緑色。本州中部以南の浅海に生息し,インド洋西部まで分布する。やや小型のモンハナシャコ O. scyllarus とともに,シャコ類中最も美しい。(→甲殻類口脚類節足動物軟甲類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナシャコ」の意味・わかりやすい解説

ハナシャコ
はなしゃこ / 花蝦蛄
[学] Odontodactylus japonicus

節足動物門甲殻綱口脚(こうきゃく)目ハナシャコ科に属する海産動物。紀伊半島以南の浅海の岩礁にすみ、南シナ海、インド洋セイシェル諸島からも記録されている。体長15センチメートルほどの美しいシャコで、雄は一様に紅褐色、雌は前半が紅褐色、後半が緑青色、雌雄とも尾肢が赤紫色である。背面は頭胸甲と第1~5腹節が滑らかで、第6腹節と尾節には多数の隆起線がある。額は三角板状。目の角膜部は球形で大きい。捕脚は指節の基部がやや膨れ、内縁に5~7本の棘(とげ)状の歯が並んでいる。

[武田正倫]

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