モラン(Paul Morand、フランスの詩人、小説家)(読み)もらん(英語表記)Paul Morand

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

モラン(Paul Morand、フランスの詩人、小説家)
もらん
Paul Morand
(1888―1976)

フランスの詩人、小説家。裕福なパリの家庭に育ち、高等政治学院、オックスフォード大学に学んで外交官となる。第一次世界大戦とその戦後の外交の裏面に立ち会うとともに、プルースト、コクトーらと親交を結び、詩集『アーク灯』(1919)、短編集『三人の女』(1921)でデビュー。コスモポリタンというよりむしろあくまでヨーロッパ的価値の視線から、しかし鋭い描写力をもって1920年代世界の都市生活を描いた。『夜ひらく』Ouvert la Nuit(1922)、『夜とざす』Fermé la Nuit(1923)、『ルイスとイレーヌ』Lewis et Irène(1924)などの小説、『ニューヨーク』(1929)、『ロンドン』(1933)、『ブカレスト』(1935)の三作を頂点とする都市の肖像などがある。第二次大戦中ビシー政権の外交にかかわったため、戦後の復権が遅れたが、68年アカデミー会員に迎えられた。戦後の作品に、短編集『ヘカテと犬たち』Hécate et ses chiens(1954)、旅行記『ベニス』(1971)などがある。日本では、堀口大学翻訳を通じて『夜ひらく』(1924・新潮社)が大正末年に新感覚派影響を与えたことが指摘されている。

小林 茂]

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