世代促進(読み)せだいそくしん

改訂新版 世界大百科事典 「世代促進」の意味・わかりやすい解説

世代促進 (せだいそくしん)

品種改良を効率的に進めるために,個々の世代の経過を短縮する操作。作物の品種改良は長年月かかるのが普通である。とくに交雑育種法を採用した場合,交雑によって遺伝質が不均一になった状態から,実用に耐える程度の均一な状態になるまで,順次世代を重ねて選抜を加えていくので,新品種として普及の段階に入るまでに,およそ10~15年を必要とする。そこで1年に1世代を経過させるという普通の栽培方式を改めて,とくに育種過程の初期の段階に,1年間にできるだけ多くの世代を経過させ,育種の年限を短縮しようとするものである。たとえば夏作物のイネ,ダイズでは,沖縄などの温暖な冬季を活用して栽培することにより,年間2~3世代を経過させることができる。秋まき栽培のコムギオオムギでは,本州の育成地の普通栽培で6月に収穫した交配種子温度調節施設内で栽培し,秋に収穫する。その種子を12月に沖縄や鹿児島などで栽培すると,翌年の5月には収穫できる。つづいて次の世代を北海道で栽培すると8月中に採種できる。このようにして世代を促進し,収穫した種子は秋から育成地で普通栽培に移し,正常な育種選抜に移るといった操作が行われる。なお作物の花芽分化や種子の休眠は,温度や光条件によって規定される面が強いので,各作物について,この性質を巧みに利用し,温度・光環境調節施設を活用すると驚くほどの世代促進が可能である。コムギでは1年6世代をすすめることも場合によっては可能となっている。このような技術は遠縁交雑のようになんども選抜や交配をくり返して,長年月を必要とする育種の場合にとくに有効である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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