勧農固本録(読み)かんのうこほんろく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「勧農固本録」の意味・わかりやすい解説

勧農固本録
かんのうこほんろく

江戸中期の地方書(じかたしょ)。著者は丹波(たんば)国篠山(ささやま)(兵庫県丹波篠山市)の万尾時春(まおときはる)。1725年(享保10)に刊行され、上下2巻よりなる。上巻には、郷村諸事吟味(ぎんみ)之事、土地位付(くらいづけ)并(ならびに)作物仕付(しつけ)之事、検見(けみ)并取箇付(とりかづけ)之事の3項が、下巻には、年貢(ねんぐ)収納之事、検地仕様之事、地普請(じぶしん)之事、山林竹木仕立様之事、公事(くじ)訴訟之事、役人平日心掛之事、井田(せいでん)和解之事の7項がそれぞれ収められて、詳細かつていねいな地方支配心得方が説示されている。なお、本書冒頭部分には、同じく地方書の一つである『田園類説』の著者小宮山昌世(こみやましょうせい)と平維章(たいらのこれあき)(儒者、号は篠崎東海(しのざきとうかい))の序2編が付されている。『日本経済大典』第4巻、『日本経済叢書(そうしょ)』第5巻所収。

[飯島千秋]

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改訂新版 世界大百科事典 「勧農固本録」の意味・わかりやすい解説

勧農固本録 (かんのうこほんろく)

江戸時代の農政書。丹波国篠山藩士の万尾時春が1725年(享保10)に刊行。上下2巻。書名は〈民は惟(これ)邦(くに)の本,本固ければ邦寧(やすし)〉の由来による。内容は土壌や作物などの農業技術にも触れているが,検地や検見や年貢の収納等,幕藩体制下の農村統治法に力点がおかれている。江戸中期の農村統治,あるいは支配者の農民観を知るために有用である。《日本経済大典》所収。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「勧農固本録」の意味・わかりやすい解説

勧農固本録
かんのうこほんろく

正しくは『算法入 (さんぽういり) 勧農固本録』。江戸時代中期の農書。丹波篠山 (ささやま) 藩士万尾 (まお) 時春が著わし,小宮山昌世らの序文がある。享保 10 (1725) 年刊。「郷村諸事吟味の事」以下農政全般にわたり9章 163ヵ条の心得を説くが,従来類書の説を批判し,老農旧吏の意見を聞いてまとめてあり,江戸時代中期の殖産勧農思想を知るうえで代表的著作とされる。

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