欧州人権条約(読み)おうしゅうじんけんじょうやく(英語表記)Convention for the Protection of Human Rights and Fundamental Freedoms

知恵蔵 「欧州人権条約」の解説

欧州人権条約

西欧の社会・文化的統合を進めている欧州審議会人権の地域的実現を確保するため準備し、その加盟国が1950年11月4日、ローマで作成、53年9月3日に発効した条約。世界人権宣言が定めた主要な自由権的人権の保護を規定しているが、その後作成された14の追加議定書によって、財産権、教育権、移動の自由、追放の禁止なども補充されている。社会権的人権については、別個の欧州社会憲章(ヨーロッパ社会憲章)が61年10月18日に作成され、65年2月26日に発効。この人権条約では、人権保護を確保するため、条約違反の人権侵害につき、他の加盟国、被害者個人、民間団体、個人集団からの救済申し立てにより欧州人権委員会(ヨーロッパ人権委員会)が審査する道を開いていたが、98年11月1日、欧州人権裁判所(ヨーロッパ人権裁判所)に統合した。同種の地域的人権条約には、69年11月22日作成の米州人権条約がある(78年7月11日発効)。なお、欧州連合(EU)の議会・理事会・委員会は2000年12月7日、死刑廃止、クローン人間禁止、個人情報取得・訂正権などを含む、EU市民を対象とした54カ条の欧州連合基本権憲章を採択した。04年6月18日採択されたEU憲法も、第2部に基本権憲章を置いた。しかし05年5月のフランスオランダ国民投票での批准拒否により、決定が08年まで先送りされている。

(宮崎繁樹 明治大学名誉教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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