翻訳|referendum
直接民主制の一形態。提案された国政に関する重要事項(たとえば憲法改正)について、議会の議決のみによって確定しないで、さらに、選挙権を有する国民の一般投票によって、最終的な賛否を問う制度である。すなわち、国民が、議員その他公務員の選挙以外の重要事項の決定に直接その意思を表明し、可否を決定することをいう。起源は遠く古代ギリシアにさかのぼるが、近世における国民投票の発祥地はスイスである。憲法の国民投票による決定は、1780年アメリカのマサチューセッツで行われたものが世界最初であり、次は1784年のニュー・ハンプシャーである。しかし、憲法のみならず、一般の立法にも及んで頻繁にこれを実行して、あたかも自国特有の制度のように発展せしめたのは、スイスである。レファレンダムの名称もまたスイスからおこったのである。この意味において国民投票の真の本国はスイスであるといってよい。レファレンダムの名称は16世紀から伝わったもので、その起源は15、16世紀ころの諸州の旧慣にある。諸州の村落の代表者は、法を決定する前にいちおう村落の住民の意見を聞き(ad audiendum)、その訓令を受ける(ad referendum)必要があった。現在、国民投票によって法律その他を決定する方法をreferendumというのは、このad referendumということばから出たのである。
国民投票が必要とされる理由は、議会政治に対する国民の極度の不信の結果である。議会は「国民の縮図である」べきにもかかわらず、民意は議会に反映していない。国民が「自由なのは議員の選挙のときだけにすぎない。議員の選挙が済んでしまえば、彼等はとるにも足らぬ奴隷になってしまう」(ルソー)。この結果として、議会政治への不信が高まってゆくのである。ここに、国民投票によって、この不信を是正しようとする声があがる最大の理由がある。
国民投票には任意的国民投票と強制的国民投票がある。前者は、議会の議決した法案を国民投票に付するか否かは、他の国家機関(たとえば内閣)の任意によらしめる。後者は、かならず国民投票に付するのである。国民投票は議会政治への国民的不満を平穏に治める長所はあるが、国民投票に付した事項の修正は不可能である。また棄権者が多くなるなどの短所がある。スイスでは連邦憲法の改正(第123条)に、フランスも憲法改正(第89条)に、日本国憲法も憲法改正(第96条)に、国民投票を採用している。アメリカでも多数の州で採用されている。
[伊藤 勲]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…同時にナチス分子も活動を強め,34年7月ドルフスもまたナチスに暗殺された。ドルフスの後継者シュシュニックKurt Schuschnigg(1897‐ )はオーストリアの独立を確保しようとしてヒトラーと会い,またそれを3月13日の国民投票に付そうとしたが,その先手を打って38年3月11日ナチスがオーストリアに進駐した。こうしてオーストリアはドイツ帝国に〈併合(アンシュルスAnschluss)〉された。…
…地方自治体ないし一定の地域住民が,特定の意思決定や政策の選択のために行う直接投票をいう。日本の場合,法制度上に根拠を持つものには,憲法95条,地方自治法76条,80条,82条による住民投票がある。憲法95条は,一つの地方自治体にのみ適用される特別法の制定に当たっては,当該地方自治体の住民投票において過半数の同意を得なくては,国会はこれを制定できないと定めている。後者の地方自治法の規定は,それぞれ議会の解散,議員の解職,長の解職に関する直接請求が成立した際に(有権者の3分の1以上の連署),住民の審判を仰ぐための投票である。…
※「国民投票」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新