永平広録(読み)えいへいこうろく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「永平広録」の意味・わかりやすい解説

永平広録
えいへいこうろく

鎌倉時代の仏書。道元(どうげん)撰(せん)。10巻。1236年(嘉禎2)興聖寺(こうしょうじ)開堂から52年(建長4)の示寂前年にわたる道元の言行録で、詮慧(せんね)(第1、9、10巻編集)、懐奘(えじょう)(第2~4、8巻)、義演(ぎえん)(第5~7巻)の弟子たちが説示の年代順に編集した語録。「打坐(たざ)は則(すなわ)ち正法眼蔵涅槃妙心(しょうぼうげんぞうねはんみょうしん)なり」(第4巻)の視点にたって、上堂(じょうどう)(自己の宗教の説示)、小参(しょうさん)(随時の家訓説法)、法語(ほうご)(修道規範となる説示)、偈頌(げじゅ)(法理の詩的表現)などによって、「正伝(しょうでん)の仏法」の本義を端的に学道者に示している。これを和文法語として詳細に説いたものが『正法眼蔵』で、両書は密接な関係をもっている。本書には草稿本10巻(門鶴(もんかく)本・永平寺蔵)や、1巻に抄録した『略録』がある。

[河村孝道]

『曹洞宗全書刊行会編「永平広録(流布本系)」(『曹洞宗全書 宗源 下』所収・1971・曹洞宗宗務庁出版課)』『大久保道舟編「道元和尚広録(草稿本系)」(『道元禅師全集 下』所収・1970・筑摩書房)』『鏡島元隆校注『道元和尚広録』上下(春秋社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android