正法眼蔵(読み)ショウボウゲンゾウ

デジタル大辞泉 「正法眼蔵」の意味・読み・例文・類語

しょうぼうげんぞう【正法眼蔵】[書名]

中国、南宋時代の大慧宗杲だいえそうこうの法語集。6巻。1147年成立。俗称、大慧正法眼蔵。
鎌倉時代の法語集。95巻。寛喜3~建長5年(1231~1253)成立。宗門の規則・行儀・坐禅弁道など520編からなる、曹洞そうとうの根本聖典。永平正法眼蔵。

しょうぼう‐げんぞう〔シヤウボフゲンザウ〕【正法眼蔵】

一切のものを明らかにし、包み込んでいる、正しい教え。仏法。
[補説]書名別項。→正法眼蔵

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精選版 日本国語大辞典 「正法眼蔵」の意味・読み・例文・類語

しょうぼうげん‐ぞうシャウボフザウ【正法眼蔵】

  1. ( 「しょう」「げん」はそれぞれ「正」「眼」の呉音 )
  2. [ 1 ] ( 「眼」は照らすこと、「蔵」は含蔵の意 ) 仏語。一切を照らし、包んで、あますところのない無上の法、すなわち仏法の眼目、仏法の根本真理のこと。
    1. [初出の実例]「いまこの如来一大事の、正法眼蔵、無上の大法を禅宗となづくる」(出典:正法眼蔵(1231‐53)弁道話)
    2. [その他の文献]〔景徳伝燈録‐二〕
  3. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 中国宋代の宗杲(そうこう)大慧の法語を侍者沖密慧然が集録した書。
    2. [ 二 ] 日本曹洞宗の開祖道元の主著。寛喜三~建長五年(一二三一‐五三)の間に、折にふれて説示されたもの。現行本は九五巻。修証一如の宗教的世界がすぐれた和文によって明らかにされ、哲学や文学の分野でも高く評価されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「正法眼蔵」の意味・わかりやすい解説

正法眼蔵
しょうぼうげんぞう

鎌倉時代の仏書。道元(どうげん)撰(せん)。道元の代表的著書の一つ。参禅修行のうえに必要と考えられる古則(こそく)(真理実践の規範となる禅者のことば)を漢文体で集録した真字(しんじ)本(3巻)と、和文体仮字(かな)本(96巻)の2種がある。仮字本は真字本の古則を台本として、道元自らの深い悟りの境涯を述べた書で、1231年(寛喜3)から43年(寛元1)までの京都在住中の著47巻、以後越前(えちぜん)(福井県)に入って示寂に至る1253年(建長5)の間の著38巻、説示の時や場所が不定の著10巻がある。100巻を撰述する意図で自ら87巻(旧草75巻、新草12巻)を編成したが、病のために中断した。ほかに60巻、84巻などの伝写本があるが、江戸時代に晃全(こうぜん)が95巻を結集し、これを玄透(げんとう)が再編成し諸本と校合して本山版(ほんざんばん)(永平寺本)として刊行した。本書は、全仏法の根源である釈尊(しゃくそん)の自内証(じないしょう)(悟りの原体験)に直結する道元の深い禅定(ぜんじょう)体験を通して、坐禅(ざぜん)を全一なる「正伝(しょうでん)の仏法」ととらえ、この坐禅の唯一(ゆいいつ)絶対行(ぎょう)こそが万人の拠(よ)るべき安楽の道であることを説く。この禅定に明証(めいしょう)された「一切衆生悉有仏性(いっさいしゅじょうしつうぶっしょう)」(すべての存在が仏(ほとけ)のいのちであるということ)が万人に共通普遍の現事実であるとし、この普遍的生命(本証(ほんしょう))の事実にたって、広く一切の平等性と成仏(じょうぶつ)とを強調して尊厳なるいのちへの自覚を説く。それとともに、存在論にかかわる問題として、生死一如(しょうじいちにょ)、有時相即(うじそうそく)(存在の生命活動そのものが様相)、行持道環(ぎょうじどうかん)(仏性の事実を不断に相続する実践)などの論、その他、現実生活面での種々の具体的真実のあり方が説かれており、深い境涯より出(い)づる本書の思想は、日本思想の最高峰に位するものといえよう。

[河村孝道]

『大久保道舟編『古本校定 正法眼蔵』(1971・筑摩書房)』『曹洞宗全書刊行会編「正法眼蔵」(『曹洞宗全書 宗源 上』1971・曹洞宗宗務庁出版課)』『永平正法眼蔵蒐書大成刊行会編『永平正法眼蔵(諸種伝写本)』全27巻(1982・大修館書店)』『『正法眼蔵(本山版縮冊)』(1952・鴻盟社)』『寺田透・水野弥穂子編『日本思想大系12・13 道元』(1970、72・岩波書店)』『河村孝道校注『正法眼蔵』上下(1991・春秋社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「正法眼蔵」の意味・わかりやすい解説

正法眼蔵 (しょうぼうげんぞう)

日本曹洞(そうとう)宗の開祖道元の主著。95巻。仏法の真理,修行のあり方,宗門の規則などを和文で叙述したもので,日本曹洞宗の根本宗典。道元は1231年(寛喜3)8月,京都郊外の深草安養院でまず〈弁道話〉1巻を書き,その後,宇治興聖寺,波多野義重邸,六波羅蜜寺,越前吉峰寺,禅師峰(やましぶ),大仏寺(永平寺)と所を移し,23年間にわたって説き続けた。道元は100巻編述の意図をもっていたらしいが未完に終わった。本書には只管打坐(しかんたざ)(ひたすら座禅すること),本証妙修(本来悟っているものの座禅),修証一等(修行と悟りを区別しないこと),行持道環(修行者と仏とが座禅を通じて一体となること)などといわれる道元禅の真髄があますところなく語り尽くされている。道元は仏教における派閥化や女性差別に徹底して反対した。また本書で展開された時間論や存在論は,その深い思索と鋭い論理によって近代の哲学者も驚嘆するほどの独自のものを創出した。

 本書には6系統の編集本がある。75巻本(旧草)と12巻本(新草)は道元みずからの編集とされ親集本といわれる。60巻本は永平寺5世義雲の編集で,永平寺9世宋吾が謄写して後世に伝えたので宋吾本ともいう。84巻本は太容梵清(ぼんせい)が加賀仏陀寺で収集謄写したもので梵清本といい,89巻本は卍山(まんざん)道白が加賀大乗寺で編集したもので卍山本といい,95巻本(晃全本)は永平寺35世板橈晃全が編集したものである。これらの諸本を集めたものに《永平正法眼蔵蒐集大成》全25巻がある。なお《正法眼蔵》の成立には,永平寺2世孤雲懐奘(えじよう)による謄写・清書の力があずかって大きい。本書の注釈書は数多いが,経豪の《正法眼蔵抄》,天桂伝尊の《弁註幷調絃》,面山瑞方,斧山玄鈯の《聞解》,瞎道本光の《却退一字参》,雑華蔵海の《私記》,父幼老卵の《那一宝》などはその代表的なものである。近代のものとしては西有穆山(ぼくさん)の《啓迪(けいてき)》,橋田邦彦の《釈意》などがあり,また思想的なものとしては田辺元の《正法眼蔵哲学私観》,岡田宜法の《正法眼蔵思想体系》8巻がある。

 和文の《正法眼蔵》に対し,漢文の公案集である《三百則》(道元撰)を《真字正法眼蔵》ともいう。また,中国宋代の臨済宗の僧大慧宗杲(そうごう)(1089-1163)の語録6巻も《正法眼蔵》の標題をもつ。
道元
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「正法眼蔵」の解説

正法眼蔵
しょうぼうげんぞう

道元(どうげん)の法語集で,曹洞宗の根本経典。87巻,また95巻とも。成立事情を異にし,巻数の異なる4系統の伝本がある。95巻本は永平寺35世板橈晃全(ばんどうこうぜん)が1690年(元禄3)頃に編集。1231年(寛喜3)の「弁道話」から53年(建長5)の「八大人覚」まで23年間の説示を収録。道元には南宋の大慧宗杲(だいえそうこう)の公案(こうあん)集「正法眼蔵」をうけ,35年(嘉禎元)に撰述した漢文体の「真字正法眼蔵」(「三百則」とも)の公案集がある。これを基に展開したのが和文体の仮名法語「正法眼蔵」。永平寺50世玄透即中(げんとうそくちゅう)により1795年(寛政7)開版,1816年(文化13)刊本が本山版「正法眼蔵」として流布した。「岩波文庫」「日本思想大系」所収。

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百科事典マイペディア 「正法眼蔵」の意味・わかりやすい解説

正法眼蔵【しょうぼうげんぞう】

鎌倉時代の仏書で,日本曹洞宗の根本宗典。95巻。1231年―1253年の間に道元(どうげん)が和語で記したのを,没後整理したもので,弟子たちによりたびたび編集され,現在の形になった。座禅・行事・嗣法など実際面のほか,道元の思索と体験によって得られた思想が細かに説かれており,組織的叙述ではないが,その思想・思索の高さはきわめて卓越している。六系統の編集本のうち道元みずからの編とされる親集本があり,また注釈書も数多い。なお,道元の弟子懐奘(えじょう)〔1198-1280〕の《正法眼蔵随聞記》1巻も,道元の法語を記録したものとして広く読まれている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「正法眼蔵」の意味・わかりやすい解説

正法眼蔵
しょうぼうげんぞう

道元の著。 95巻。道元が寛喜3 (1231) ~建長5 (53) 年に説いた事柄を集め,また一部,草案として残されたものを侍者の懐弉 (えじょう) が書き写したものが含まれている。坐禅の工夫に始る実践面はもちろん,道元みずからの思想を,仏教の他の諸宗派や禅宗系統と対比しながら述べ,独自の立場を明確に表わして,日本思想史上,重要な書となっている。特に和文の述作である点が注目される。なお漢文の『正法眼蔵』の一部が金沢文庫で発見された。中国,宋の大慧宗杲 (だいえそうごう) に同名の語録がある。同書は6巻。紹興 17 (1147) 年刊。

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旺文社日本史事典 三訂版 「正法眼蔵」の解説

正法眼蔵
しょうぼうげんぞう

鎌倉中期,曹洞宗開祖道元の代表的著述
1231年から'53年に至る間,道元が興聖寺・永平寺などで行った説法を集録したもの。江戸時代に95巻に集大成されたが,その根幹をなすのは,弟子の懐弉 (えじよう) が師の草本を書写した75巻の部分である。禅の本質を論じ,坐禅・修行の本旨を説いた曹洞宗の根本経典ともいうべき大著述。

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世界大百科事典(旧版)内の正法眼蔵の言及

【禅宗】より

…長老の摩訶迦葉(まかかしよう)だけが,にっこりとうなずく。仏陀は迦葉をほめ,印可を与えて,自分の正法眼蔵,涅槃(ねはん)妙心,実相無相,微妙の法門を,不立文字,教外別伝して,残りなく迦葉に付嘱すると宣言するのである。自分が生涯に今まで説いた八万四千の法門は,応病与薬の方便教であった。…

【大慧宗杲】より

…頌古,普説,法語,書など著述も多く,滅後ただちに入蔵の勅許をうけたが,その墨跡は,生前より士大夫によろこばれ,日本にも舶載された。流罪中に編したという《正法眼蔵》は,道元の同名の書の祖本。【柳田 聖山】。…

※「正法眼蔵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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