頭蓋崇拝(とうがいすうはい)(読み)とうがいすうはい

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

頭蓋崇拝(とうがいすうはい)
とうがいすうはい

死者頭蓋骨を保存し崇拝する風習のことをいう。崇拝の対象となる頭蓋骨は、首狩り戦争で倒した敵の首である場合と、同じ部族や親族内の死者である場合がある。敵の頭蓋は、それをとってきた戦士の武勇の象徴であるとともに農作物豊作をもたらすと考えられる。一方同部族や親族の頭蓋骨は、幸福や利益をもたらすとされる。保存方法は幾とおりかあって、屋根に飾る、竿(さお)の先につける、壁にはめ込む、首棚に並べる等々である。首狩りは、かつてはアッサムの民族集団ナガからボルネオダヤクマダガスカルのマダガッセンに至る東南アジアの古層諸民族において行われていた。これらの民族は死者の頭蓋骨に対してあらゆる注意を払うことが知られている。このうちダヤクは、かつて首狩りの戦勝記念物である頭蓋骨を吊(つ)るした下で夜ごとに火をたいて崇(あが)めた。このほかにも頭蓋崇拝はアフリカでもあり、いわゆるエチオピア文化とよばれる栽培民文化に属する民族の所で盛んであったし、太平洋諸地域や南北アメリカの諸民族の間では最近までみられた。頭蓋骨のほか、干し首をつくる場合もあった。ニューギニアの一部では、コルワルという木像の中に頭蓋骨を入れて祀(まつ)る。これらの風習の根底には、頭蓋に霊力を認める考え方が存在するのであるが、このほかにも、人間ではなく動物の頭蓋崇拝を行うこともある。

清水 純]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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