企業の保有する生産能力を十分に活用できない状況によって発生する費用。企業は諸種の経済資源を取得し一定の生産能力(キャパシティ)を確保して経常の活動を遂行するものであるが、このキャパシティをフルに活用できない遊休(不働)の状況をつくりだすことがある。このことによって発生する機会費用もしくは機会損失をアイドル・コストという。おおむねアイドル・キャパシティ・コストと同義で、日本語では遊休費、不働費などといわれる。アイドル・コストは不況期には大きくなり、場合によってはその削減のためにキャパシティの縮小を目的とする経営構造改革(リストラクチャリング)を断行せざるをえなくなることもある。これに対して、好況を維持しているときアイドル・コストはほとんど発生せず、むしろ生産力の増強を図る政策を選択しようとする。このように、アイドル・コストを計算(測定)することは、企業の経営意思決定に重要な情報を提供するものである。原価計算としてアイドル・コストを計算するためには、生産設備の保有する実現可能な最大の能力をつねに把握しておくことが必要である。キャパシティに係るコストをこの操業水準で製品に配賦していけば、会計制度のなかで、アイドル・キャパシティ・コスト(一般に操業度差異という)を金額で把握することができる。
[東海幹夫]
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