日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクアイオン」の意味・わかりやすい解説
アクアイオン
あくあいおん
aqua ion
水分子H2O(配位子名アクア)が金属イオンに一定の比で配位しているイオン。古くは水分子の配位子名をアコaquoとよんだのでアコイオンといった。水分子は多くの金属イオンに対して配位しやすく、金属塩が水に溶けているときはほとんどの場合アクア化(H2Oが他の配位子と置換して配位するか、無水塩がアクア錯塩(さくえん)となるときをいう)して、安定な錯イオン(イオンとして行動する錯体)となっていると考えられる。硫酸ニッケル(Ⅱ)七水和物NiSO4・7H2Oとして知られているものは実は[Ni(H2O)6]2+のようなアクアイオンを含んでおり、同様に通常金属イオンといっているもの、たとえば亜鉛イオン、アルミニウムイオン、コバルト(Ⅱ)イオンといっているものも、水中ではそれぞれ、[Zn(H2O)4]2+,[Al(H2O)6]3+,[Co(H2O)6]2+のようなアクアイオンである。それらは水溶液中で配位子を解離してH+を放ちやすく、したがって酸性を示すことが多い。たとえば、
[Fe(H2O)6]3++H2O―→
[Fe(OH)(H2O)5]2++H3O+
である。
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