日本大百科全書(ニッポニカ)「配位数」の解説
配位数
はいいすう
coordination number
錯体中で、中心原子に配位している配位原子の数をいう。また結晶学的な意味では、これとすこし異なり、結晶中のある原子を取り巻くもっとも近い他の原子の数をいう。たとえば、[Co(NH3)6]Cl3,K[AuCl4],[Ag(NH3)2]Clなどのような単座配位子の配位している錯体では、それぞれ中心原子に対して配位する原子数は配位子の数に相当する6、4、2であり、すなわちCo、Au、Agの配位数はそれぞれ6、4、2である。またたとえば、K[Cr(edta)](edtaはエチレンジアミン四酢酸イオン)、[Cu(en)2]SO4(enはエチレンジアミンNH2CH2CH2NH2)などのようなキレート錯体では、エチレンジアミン四酢酸イオン(-OOCCH2)2NCH2CH2N(CH2COO-)2は六座配位子であるから配位原子数は6、エチレンジアミンは二座配位子であるから配位原子の数は4であり、したがってCrおよびCuの配位数は6および4である。
これに対し、たとえば塩化ナトリウム結晶中ではNa+を中心として、それを取り巻く正八面体の各頂点に位置する6個のCl-があり、同じくCl-に対して、正八面体の各頂点に六つのNa+が位置するため、結晶学的には塩化ナトリウム中でのNaの配位数は6、同じくClの配位数は6であるという。
現在、多くの金属イオンの配位数は、化学的性質および物理的性質、結晶の構造解析などによって明らかにされており、一定原子価状態では一定の配位数をもつが、2種以上の配位数をもつものも多くある。これまでに知られている配位数は2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであり、もっとも普通にみられるのは6であり、4がそれに次ぐ。
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