日本大百科全書(ニッポニカ) 「アジア欧州会合」の意味・わかりやすい解説
アジア欧州会合
あじあおうしゅうかいごう
Asia-Europe Meeting
アジアとヨーロッパ主要国の首脳が定期的に政治、経済、社会・文化などの問題について協議する場。英語名称の頭文字をとってASEMと略称する。アジア欧州会議ともよばれる。1994年、シンガポール首相だったゴー・チョクトンGoh Chok Tong(1941― )がアジア欧州サミット構想を提唱し、1996年に第1回アジア欧州会合をタイのバンコクで開いた。参加国は2021年時点で、アジアから日本、中国、ロシア、韓国など21か国と1機関(ASEAN(アセアン)=東南アジア諸国連合)、ヨーロッパからイギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど30か国と1機関(EU=ヨーロッパ連合)。首脳会合は隔年(偶数年)開催(2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行で延期)で、ヨーロッパとアジアで交互に開く。首脳会合の間の年(奇数年)に外相、財務相、環境相会合などを開くことが多い。その時々の国際情勢に応じた議長声明などの文書を発表。冷戦終結とアジア諸国の経済成長を受け、また、相互尊重と平等の精神に基づき、ヨーロッパ・アメリカ間の関係に比べて希薄なアジア・ヨーロッパ関係を強化する目的がある。
政治では地域情勢、軍縮・非核化、テロ対策、海洋の安全保障、エネルギー安全保障、防災、移民問題などについて、経済では貿易自由化、持続可能な開発、気候変動問題、相互投資の促進、民間部門の活用などについて、社会・文化では文化、芸術、教育、学生・若者の交流などについて協議する。形式にとらわれない非公式会合であるため、民主主義、人権、言論の自由などについても意見交換する場となっている。これまでに、アジア金融危機への対応(1998年)、テロの阻止(2002年)、リーマン・ショック対策(2008年)、原子力の安全確保(2012年)、核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮非難(2018年ほか)、エボラ出血熱や新型コロナウイルス感染症などの感染症対策(2006、2014、2021年など)を盛り込んだ声明を発表し、日中間の尖閣諸島(せんかくしょとう)問題などについても意見交換の場となっている。
[矢野 武 2022年3月23日]