改訂新版 世界大百科事典 「アツイタ」の意味・わかりやすい解説
アツイタ
Elaphoglossum yoshinagae (Yatabe) Makino
葉が厚く平板状であるために厚板(羊歯)と呼ばれているツルキジノオ科のシダ。根茎は短くはい,葉柄の基部とともに褐色,膜質,卵形の鱗片を密につける。葉は単葉,披針形。葉柄は短くて葉面との差が明らかでないこともあり,葉の全長は10~30cmである。胞子葉の葉柄は葉身より長いか同長。葉脈は遊離平行脈で,生時ははっきりみえない。胞子葉の裏面全体に胞子囊がつき,胞子が熟すると裏面は黒褐色になる。包膜や側糸はない。胞子は左右相称型。紀伊半島,伊豆諸島,四国,九州,琉球に産し,林下の岩上や樹幹に着生する。台湾,中国南部からタイにかけて分布する。
アツイタ属Elaphoglossumは,熱帯を中心に,世界で約400種が分布しており,南アメリカで多くの種が分化している。日本には葉形と葉縁の薄膜の発達などで区別できるヒロハアツイタがある。
執筆者:加藤 雅啓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報