改訂新版 世界大百科事典 「アデニウム」の意味・わかりやすい解説
アデニウム
Adenium
キョウチクトウ科の1属。多肉な低木で,枝先に桃色のキョウチクトウに似た花弁の厚い花をつけるが,有毒な植物である。鉢植えや地植えにされ,熱帯地方では花木として庭園や並木に植栽される。アデニウム属には10種あまりが知られているが,栽培されているのは主としてオベースムA.obesum Balf.(英名desert rose)で,原産地はアラビア半島南部。葉は楕円形で先に向かってやや広がり,先端は丸味を帯びている。葉色は濃緑色で,厚く革質であるが,乾燥期には落葉し裸となる。花は新芽の出たあとに数花が集まってつき,漏斗状で先は5片に分かれ広がり,長期間咲く。近縁種にインパラリリーA.multiflorum Klotzsch.(英名impara lily)がある。オベースムをはじめアフリカ産のアデニウム植物のいくつかは,矢毒や魚毒に利用される。繁殖は実生または挿木により,用土は砂まじりの排水のよいものが適する。真夏の高温多湿を避け,冬は乾きぎみにし,保温する。
執筆者:古里 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報