日本大百科全書(ニッポニカ) 「アノーソサイト」の意味・わかりやすい解説
アノーソサイト
あのーそさいと
anorthosite
ほとんど斜長石のみからなる粗粒の岩石。斜長岩ともいう。少量の斜方輝石、単斜輝石などを含む。アノーソサイトには斜長石の組成の少し異なる次の二つの種類がある。
(1)斜長石がカルシウムに富む亜灰長石のもので、巨大な塩基性層状貫入岩体の一部にみられる。これは貫入岩体をつくった玄武岩マグマの結晶作用に際して、晶出した斜長石が一部に集積してできたもの。月面で、地球からみると白っぽくみえるところは高地とよばれているが、高地をつくっている岩石の一つとして、この種類のアノーソサイトがみいだされている。
(2)斜長石がそれほどカルシウムに富まず、中性長石から曹灰(そうかい)長石ぐらいのもの。これはカナダ、アメリカ、オーストラリア、アフリカなどの、先カンブリア時代の岩石が広く露出している楯状地(たてじょうち)のなかにあって、巨大なバソリスをつくっている。この地域には、アノーソサイトに伴ってグラニュライトやエクロジャイトもあり、地域全体が高い温度の変成作用を受けたことを示している。アノーソサイトもその変成作用の産物と考えられている。
日本では二、三の斑糲(はんれい)岩体に伴ってきわめて小規模に、斜長石のみからなる岩石がみいだされるだけで、(2)の種類のようなアノーソサイトはまったく分布していない。
[橋本光男]