長石(読み)チョウセキ(その他表記)feldspar

翻訳|feldspar

デジタル大辞泉 「長石」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐せき〔チヤウ‐〕【長石】

アルミニウムカリウムナトリウムカルシウムなどを含む珪酸塩けいさんえん鉱物単斜晶系の正長石、三斜晶系斜長石などに分類される。たいていの岩石に含まれる造岩鉱物

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精選版 日本国語大辞典 「長石」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐せきチャウ‥【長石】

  1. 〘 名詞 〙 アルミニウムを含む珪酸塩鉱物。単斜晶系または三斜晶系。含有する元素によってカリ長石・曹長石・バリウム長石・灰長石に分ける。カリ長石は正長石と微斜長石に細分され、また曹長石と灰長石の固溶体を斜長石という。造岩鉱物として地殻中に最も多量に存在する。〔本草和名(918頃)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「長石」の意味・わかりやすい解説

長石 (ちょうせき)
feldspar

地殻を構成する最も重要な造岩鉱物の一つ。月の岩石や隕石中にも広く見られる。化学組成は,一般にMT4O8で表され,MはCa,Na,K,Ba,またTはAl,Siである。天然に産する長石は,ほとんどCaAl2Si2O8(アノーサイト,An),NaAlSi3O8(アルバイト,Ab),KAlSi3O8(カリ長石,Or)を端成分とする三成分系に属し,その組成はOrxAbyAnzxyz=100)のように表現される。アノーサイトとアルバイトの間の固溶系列を斜長石といい,アルバイトとカリ長石の間の固溶系列をアルカリ長石と呼ぶ。またカリ長石とアノーサイトの間の固溶系列は,天然には見いだされていない。

 長石には,三斜晶系に属するものと単斜晶系に属するものの2種類がある。これは結晶構造におけるMT4O8のTの席を占めるAlとSiの秩序度に依存しており,例えば,高い温度で生成されAlとSiが順序よく配列せずに結晶化すると単斜晶系となり,低い温度でゆっくり生成されるとAlとSiが順序よく並んで三斜晶系となる。比重は成分によって異なり,およそ2.55~2.76で,モース硬度6。へき開は{001},{010}の2面に良好である。色は,ガラス光沢をもった白,クリーム,ピンク,灰色などであるが,特にムーンストーン(月長石),ラブラドライトなどと呼ばれるものは,緑,黄,赤,青などのせん光を示す。これは,二つの成分の異なった長石の細かい互層や結晶内部に包有された細かい不純物(例えばチタン鉄鉱)が光の干渉を起こしたものといわれる。また長石には,多くの種類の双晶が存在する。カリ長石におけるカールスバード双晶がよく知られているが,これは結晶が成長したときにできる一時的双晶であり,アルバイト双晶,ペリクリン双晶は,結晶の生成後,二次的にできた双晶といわれており,多くの場合,細かい集片状双晶をしている。

KAlSi3O8(Or)。結晶構造上の違いによって,高温サニディン,低温サニディン,正長石,マイクロクリンに分けられる。違いは,主として結晶構造中のAlとSiの並び方の秩序度による。前に記したものほど高温で安定であり,AlとSiは無秩序に並ぶ。サニディンは火山岩に含まれ,正長石は深成岩や高温変成岩に,また,マイクロクリンはペグマタイト,低温変成岩に見られる。カリ長石,特にマイクロクリンは大きな自形を示す結晶が少なくない。このほか,アデュラリア(氷長石)と呼ばれる鉱物がある。これは正長石の一種で,準安定相であるが,ヨーロッパ・アルプスから非常に美しい結晶が産することで知られている。二つのへき開の間の角度は,サニディン,正長石では90度であるが,マイクロクリンではわずかに90度より外れる。

(K,Na)AlSi3O8。カリ長石とアルバイトの間の固溶系列の総称。特にアルバイトに近い成分の鉱物をアノーソクレスと呼ぶ。高温では両者の間で連続的に混じりあう完全固溶系列が存在するが,温度が下がるにつれて大きく二つの相に分かれ(離溶),さらに双晶するなどして複雑な微細組織が現れる。アノーソクレスには,2相の光の干渉現象によるせん光を示すムーンストーンと呼ばれる鉱物もある。

NaAlSi3O8(Ab)。結晶構造,主としてAl,Siの並び方の秩序度によって高温アルバイトと低温アルバイトの2種類がある。火山岩中にまれに高温アルバイトが見いだされるが,低温アルバイトはペグマタイトや広域変成岩に見られる。ともに三斜晶系に属するが,最近の研究によると,さらに高温の領域に斜方晶系に属する相が存在するといわれる。二つのへき開の間の角度は約93度。

(Na,Ca)(Al,Si)2Si2O8。アルバイトとアノーサイトの間の固溶系列の総称。アルバイトとアノーサイトとの組成比によって,アルバイト(Ab100An0~Ab90An10),オリゴクレース(Ab90An10~Ab70An30),アンデシン(Ab70An30~Ab50An50),ラブラドライト(Ab50An50~Ab30An70),バイトウナイト(Ab30An70~Ab10An90),アノーサイト(Ab10An90~Ab0An100)のような名称が与えられている。高温では,アルバイトとアノーサイトの間は,連続的に混じりあう完全固溶系列が存在するが,低温では,いくつかの不混和領域が出現する。この固溶系列は,NaSi⇄CaAlという複雑な置換に基づいているため,低温における相関係はかなり複雑で,まだ未解明のことが多い。斜長石は,造岩鉱物として,火成岩,変成岩のみならず堆積岩にも広く含まれる。斜長石では,屈折率,比重などが化学組成の変化と対応して連続的に変化するため,それらの測定により組成を決定することができる。

CaAl2Si2O8(An)。AlとSiの比がアルバイトやカリ長石と異なるため,結晶構造も少し異なる。三斜晶系に属する。火成岩,変成岩に広く産するが,純粋なアノーサイトは比較的珍しく,北海道の火山(樽前山,フゴッペなど)や三宅島などに産する自形を呈するアノーサイトは,世界的に知られている。アノーサイトにおいても,2方向にへき開が発達しており,両者のなす角度は90度よりやや大きい。
執筆者:

長石のうち宝石用となる代表的なものにムーンストーン,サンストーン,アマゾナイト,ラブラドライトがある。ムーンストーンは和名を月長石といい,月光を思わせる帯青乳白色を示す。サンストーンsunstoneは和名を日長石といい,オリゴクレース(斜長石の一種)に属し,帯橙赤色を示す。内部に赤鉄鉱(ヘマタイト),針鉄鉱(ゲータイト)の薄片結晶が平行に数多く分布・内包されていることから,キラキラ輝くアベンチュリンaventurine効果を示す。代表的産地はインド,ノルウェーである。アマゾナイトamazonite(天河石)はマイクロクリン(カリ長石の一種)の宝石名で,微量の銅の含有によって緑色を示す。ブラジルには産出はあるがアマゾン川地域には産出しない。他にアメリカ(特にコロラド州産が良質石),マダガスカル,ウラルなどが産地である。ラブラドライトには熱帯のモルフォチョウの羽の輝きを思わせる青色のせん光,それに各色の虹色効果を伴う独特の光の効果を示すものがあり,この効果はラブラドル効果と呼ばれている。主産地はカナダのほか,マダガスカル,フィンランドなどである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「長石」の意味・わかりやすい解説

長石
ちょうせき
feldspar

地殻を構成する鉱物のうち、もっとも存在量が多い鉱物。アルカリ金属、アルカリ土類金属を主成分とするアルミノ珪酸塩鉱物(けいさんえんこうぶつ)で、アルミニウムとケイ素の比は1対3から2対2までの範囲にある。長石のうちよくみられるものは斜長石グループとカリ長石グループで、前者は三斜晶系に属し、ナトリウムを主成分とする曹長石から、カルシウムを主成分とする灰長石まで組成が連続する。後者には、単斜晶系の玻璃(はり)長石、正長石と三斜晶系の微斜長石が含まれる。ほかに、アルカリ金属を主成分とするアノーソクレース、バリウムを主成分とする重土長石celsian、ストロンチウムを主成分とするスローソン石slawsoniteがある。ほとんどの長石には生成温度による結晶構造の変化、温度の低下によって異なる二つの相に分離する離溶現象、双晶の出現といった性質が現れる。外観は、多少色がついているが、ほぼ白色で、板状、柱状の結晶形をしていることが多い。また、二方向の劈開(へきかい)が完全である。したがって外観で長石類を区別することは困難で、産状による識別が有効なことがある。英名のフェルスパーというのはスウェーデン語に由来し、漂礫(ひょうれき)土中の劈開がよく発達している石という意味である。

[松原 聰]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「長石」の意味・わかりやすい解説

長石
ちょうせき
feldspar

カリウム,ナトリウム,カルシウム,バリウムのアルミノケイ酸塩鉱物で,岩石を構成する最も普遍的な鉱物。 (K,Na,Ca,Ba)(Al,Si)4O8 。結晶構造上,Si4+ の一部分が Al3+ によって置換され,それによる荷電の変化をちょうど中和するように,SiO4 四面体の間のすきまに K+ ,Na+ ,Ca2+ ,Ba2+ などが入っている。天然に産する長石は大部分,KAlSi3O8 (カリウム長石) ,NaAlSi3O8 (ナトリウム長石) ,CaAl2Si2O8 (カルシウム長石) を端成分とする3成分系に属する。 KAlSi3O8-NaAlSi3O8 および NaAlSi3O8-CaAl2Si2O8 は連続固溶体を形成し,それぞれの系列をアルカリ長石および斜長石と総称する。アルカリ長石は正長石 (カリウム長石,カリ長石) で代表され,酸性の火成岩 (花崗岩,石英斑岩,流紋岩) の主成分鉱物で,桜色の花崗岩 (桜御影) の淡紅色鉱物は正長石である。斜長石は中性,塩基性の火成岩の主成分鉱物で,日本の酸性岩には含まれることが多い。ナトリウムとカルシウムの比は連続的に変化し,酸性岩から塩基性岩になるにつれて,ナトリウムの多いものからカルシウムに富む斜長石が多くなる。ナトリウム,カルシウムを主成分とする斜長石をそれぞれ曹長石灰長石といい,ナトリウムとカルシウムをほぼ等量含む斜長石を中性長石という。陶磁器の原料の陶土は長石の風化したものである。

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百科事典マイペディア 「長石」の意味・わかりやすい解説

長石【ちょうせき】

最も重要な造岩鉱物。化学組成がCa,Na,Kなどのアルミノケイ酸塩からなる鉱物の一群で,フレームワーク(網状)構造をもつケイ酸塩鉱物として代表的なもの。ふつう成分を表すのにOr=KAlSi3O8カリ長石),An=CaAl2Si2O8(灰長石),Ab=NaAlSi3O8(ソウ長石)などの記号を用い,AbとAnはあらゆる割合で固溶体(斜長石)をつくる。まれにCe=BaAl2Si2O8(重土長石)の組成の長石もある。単斜晶系または三斜晶系で,どちらの場合もへき開の完全な短柱状結晶を示し,へき開面でいろいろな双晶をつくる。物理的性質はきわめて類似した共通性を示し,硬度6〜6.5,比重2.56〜2.76,色は白色または黄・淡紅・淡緑色など。高温型と低温型があり,前者は火山岩中に,後者は他の岩石中にみられる。長石はほとんどすべての火成岩中で重要な役割を果たし,長石の組成によって火成岩が分類される。変成岩においても主要構成鉱物であり,砂質堆積岩にも相当量含まれる。変質作用によって絹雲母,カオリンなどの粘土鉱物に変わる。
→関連項目ムーンストーン

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化学辞典 第2版 「長石」の解説

長石
チョウセキ
feldspar, felspar

Ca,Na,Kなどからなるアルミノケイ酸塩鉱物の総称.地球上に広く分布し,大量に存在する.代表的なものにNaAlSi3O8(曹長石),CaAl2Si2O8(灰長石),KAlSi3O8(正長石)などがある.少量ではあるが,BaAl2Si2O8(バリウム長石)が産出する.曹長石と灰長石間の固溶体を斜長石,曹長石と正長石間のそれをアルカリ長石といい,長石はこれら二つに分けられる.後者は低温で不連続固溶体,高温で連続固溶体となる.斜長石は三斜晶系,カリ長石は単斜晶系に属する.カリ長石で,三斜晶系のものを微斜長石という.

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