翻訳|gabbro
ガブロともいう。玄武岩と同じ範囲の化学組成をもつ苦鉄質深成岩の総称。IUGS(国際地質科学連合)が提唱した分類基準では、長石総量に対する斜長石量が90%以上、斜長石の組成が灰長石(アノーサイト)成分50%以上、石英含量5%未満、苦鉄質鉱物量90%以下となっている。
[千葉とき子]
斑糲岩は化学組成の違いによって、(1)鉄/マグネシウムの比が高くアルカリに乏しいソレアイト岩系斑糲岩、(2)鉄/マグネシウム比が低いカルク・アルカリ岩系斑糲岩、(3)アルカリ岩系アルカリ斑糲岩の3グループに区分される。
(1)は斜長石と普通輝石(オージャイト)、斜方輝石を主とする。橄欖(かんらん)石を含むことがある。随伴鉱物はチタン磁鉄鉱、チタン鉄鉱、燐(りん)灰石、石英、アルカリ長石など。斜方輝石は普通輝石のラメラlamella(ごく薄い板状の結晶粒。離溶してできた離溶ラメラ)を含むことが多い。斜方輝石のあるものは「転移したピジョン輝石」である。このグループの斑糲岩には橄欖石斑糲岩(橄欖石を多く含む)、鉄斑糲岩(橄欖石と輝石が鉄を多く含み、チタン磁鉄鉱の量が多い)、ユークライトeucrite(灰長石に近い斜長石と普通輝石、斜方輝石からなる)、トロクトライトtroctolite(斜長石と橄欖石からなる)などがある。
(2)は斜長石、普通輝石、斜方輝石からなる。橄欖石、ホルンブレンド(普通角閃(かくせん)石)、黒雲母(くろうんも)などを伴う。随伴鉱物は(1)と同じ。「転移したピジョン輝石」を含むことはない。このグループにはホルンブレンド斑糲岩(ホルンブレンドを多く含む)、ノーライトnorite(カルシウムの多いエンスタタイトに近い斜方輝石がおもで普通輝石は少ない)がある。
(3)はチタンに富む普通輝石を多く含み、斜方輝石を含まないのが特徴。随伴鉱物は(1)のほかにチタン石がある。このグループの斑糲岩にはエセクサイトessexite(斜長石、アルカリ長石、パーガス閃石質ホルンブレンド・ケルスート閃石・リーベック閃石・アルベゾン閃石などの角閃石、橄欖石、黒雲母、霞石(かすみいし)などを伴う)、ションキナイトshonkinite(アルカリ長石、エジリン輝石質普通輝石(エジリンオージャイト)、橄欖石、黒雲母、霞石のほかに、斜長石、アルカリ角閃石、沸石なども伴う)、アイヨライトijolite(長石を含まず霞石を多く含む。エジリン輝石質普通輝石、ざくろ石、黒雲母などを伴う)がある。
[千葉とき子]
斑糲岩はロポリス(皿状)、ロート状、シル状などの貫入体として産する。地殻の構成単位として重要なのはソレアイト岩系斑糲岩のグループである。それらは大陸地域では南アフリカのブッシュフェルト貫入岩体(450キロメートル×270キロメートルの広がりと5キロメートルに及ぶ厚さをもつ巨大なロポリス)をはじめ、アメリカのダルース(延長240キロメートル、最大幅50キロメートルの三日月型シル)、カナダのサドベリーなどの岩体が有名である。海洋底ではオフィオライトophiolite(超苦鉄質岩、苦鉄質岩、チャートなどが複合して造山帯に産するもの)の一部として、上位の枕(まくら)状溶岩と下位の橄欖岩層との間に挟まれた層状の岩体をなす。これらの大規模な岩体では、玄武岩質マグマが完全に固まるまでに分別結晶作用や早期に晶出した結晶の沈積作用がおこるため、超苦鉄質岩から珪(けい)長質岩に至るさまざまな岩相が層をなしているようにみえることが多く、層状貫入岩体とよばれる。
斑糲岩そのものは装飾用石材として利用される。重金属に富む沈積結晶の多い部分はクロム、ニッケル、コバルト、白金などの鉱床として(たとえば南アフリカのルステンバーグではブッシュフェルト貫入岩体の一部を白金の鉱床として)採掘されている。
[千葉とき子]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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