斑糲岩(読み)はんれいがん(英語表記)gabbro

翻訳|gabbro

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

斑糲岩
はんれいがん
gabbro

ガブロともいう。粗粒ないし中粒で,等粒状組織を有する苦鉄質火成岩。玄武岩の深成相に相当し,主としてラコリスロポリス,シルなどとして産出する。色指数 40~70。灰長石成分に富む斜長石普通輝石紫蘇輝石橄欖石などを主成分とし,まれに角閃石や黒雲母を含む。鉱物組成に応じて正規斑糲岩 (灰長石成分に富む斜長石と普通輝石を主とするもの) ,ノーライト (紫蘇輝石の量が普通輝石よりもはるかに多いもの) ,橄欖石斑糲岩 (比較的多量の橄欖石を含んでいるもの) などの型が区別されている。

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岩石学辞典の解説

斑糲岩

斑糲岩はイタリアのトスカナ地方(Tuscana)の古い名前で,異剥石長石岩,異剥石蛇紋岩など,種々の岩石に付けられたものである.この名称はフィレンツェの石工の俗語であったが,次第に学術語として取り入れられるようになった.1768年にトゼッティによって数種類の岩石が最初に記載され,斑糲岩をダイレージ蛇紋岩と同義に用いたが[Trozzetti : 1768],1818年にブッフが斑糲岩を異剥石(diallage)とAn50以上の長石あるいはソーシュル石から構成された粗粒の深成岩と定義した[Buch : 1810].1835年にはローズは斑糲岩を異剥石とラブラドライトかバイトゥナイトからなるものとしている[Rose : 1835].当初は輝石として異剥石が必要であったが,現在は輝石の種類を考慮しない.斑糲岩の性質はツィルケル,ローゼンブッシュ,ティールなどによって詳細に記載され,岩質,産状などが明らかにされてきた[Zirkel : 1866, Rosenbusch : 1877, Teall : 1888].
斑糲岩は粗粒あるいは中粒で硬く,一般に暗色から中間色の顕晶質粒状の深成岩である.玄武岩やドレライトに相当する化学組成を持っている.斑糲岩の主成分はAn成分が50%よりも多い斜長石で,典型的な有色鉱物は斜方輝石,ピジョン輝石,オージャイト,ハイパーシン,橄欖(かんらん)石であるが,稀に角閃石や黒雲母を含むことがある.斑糲岩の色指数は40~70と変化するが,平均的なものは47である.ラブラドライトとオージャイト(あるいは異剥石)で構成されるものを斑糲岩といい,単斜輝石よりもハイパーシンが著しく多いものをハイパーシン斑糲岩(norite)という.橄欖石を含む場合には橄欖石斑糲岩といい,斜長石が灰長石の場合をユークライト(eucrite)という[Tomkeieff : 1983].石英の存在するものを石英斑糲岩という.これに対して閃緑岩は斜長石と角閃石を主とし色指数は10~40である.
斑糲岩は一般に粗粒で,鉱物成分も構造も肉眼観察で比較的よく特徴が認められる場合が多いので,古い時代の命名と現在の命名とに著しい差はなかったことと思われる.他の岩石との混同は少ないが,輝緑岩,ドレライト,閃緑岩とは類似する場合がある.特に粗粒の輝緑岩とは鉱物成分,産状などがほとんど同様な場合があり,オフィティック構造を輝緑岩の特徴と限定しない限り,両者の区別が非常に困難な場合が起こる.gabbroの語はラテン語とイタリア語のglaberで,滑らかなの意味.英語ではglobrousは動物,植物の無毛の意味と同根である[ランダムハウス : 1994].日本語の斑糲岩は1884年に小藤文二郎の訳で,斑はまだら,糲はまだ搗いていない米つまり玄米の意味である.斑糲岩は飛白岩とも書く.飛白は絣(かすり)のことで小さい模様を多数置いた織物の模様である.

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大辞林 第三版の解説

はんれいがん【斑糲岩】

塩基性の深成岩。玄武岩とほぼ同じ成分をもつ。主に輝石と斜長石とからなり、橄欖かんらん石・角閃石・石英のいずれかを含む。かすりいわ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

斑糲岩
はんれいがん
gabbro

ガブロともいう。玄武岩と同じ範囲の化学組成をもつ苦鉄質深成岩の総称。IUGS(国際地質科学連合)が提唱した分類基準では、長石総量に対する斜長石量が90%以上、斜長石の組成が灰長石(アノーサイト)成分50%以上、石英含量5%未満、苦鉄質鉱物量90%以下となっている。[千葉とき子]

分類

斑糲岩は化学組成の違いによって、(1)鉄/マグネシウムの比が高くアルカリに乏しいソレアイト岩系斑糲岩、(2)鉄/マグネシウム比が低いカルク・アルカリ岩系斑糲岩、(3)アルカリ岩系アルカリ斑糲岩の3グループに区分される。
 (1)は斜長石と普通輝石(オージャイト)、斜方輝石を主とする。橄欖(かんらん)石を含むことがある。随伴鉱物はチタン磁鉄鉱、チタン鉄鉱、燐(りん)灰石、石英、アルカリ長石など。斜方輝石は普通輝石のラメラlamella(ごく薄い板状の結晶粒。離溶してできた離溶ラメラ)を含むことが多い。斜方輝石のあるものは「転移したピジョン輝石」である。このグループの斑糲岩には橄欖石斑糲岩(橄欖石を多く含む)、鉄斑糲岩(橄欖石と輝石が鉄を多く含み、チタン磁鉄鉱の量が多い)、ユークライトeucrite(灰長石に近い斜長石と普通輝石、斜方輝石からなる)、トロクトライトtroctolite(斜長石と橄欖石からなる)などがある。
 (2)は斜長石、普通輝石、斜方輝石からなる。橄欖石、ホルンブレンド(普通角閃(かくせん)石)、黒雲母(くろうんも)などを伴う。随伴鉱物は(1)と同じ。「転移したピジョン輝石」を含むことはない。このグループにはホルンブレンド斑糲岩(ホルンブレンドを多く含む)、ノーライトnorite(カルシウムの多いエンスタタイトに近い斜方輝石がおもで普通輝石は少ない)がある。
 (3)はチタンに富む普通輝石を多く含み、斜方輝石を含まないのが特徴。随伴鉱物は(1)のほかにチタン石がある。このグループの斑糲岩にはエセクサイトessexite(斜長石、アルカリ長石、パーガス閃石質ホルンブレンド・ケルスート閃石・リーベック閃石・アルベゾン閃石などの角閃石、橄欖石、黒雲母、霞石(かすみいし)などを伴う)、ションキナイトshonkinite(アルカリ長石、エジリン輝石質普通輝石(エジリンオージャイト)、橄欖石、黒雲母、霞石のほかに、斜長石、アルカリ角閃石、沸石なども伴う)、アイヨライトijolite(長石を含まず霞石を多く含む。エジリン輝石質普通輝石、ざくろ石、黒雲母などを伴う)がある。[千葉とき子]

産状

斑糲岩はロポリス(皿状)、ロート状、シル状などの貫入体として産する。地殻の構成単位として重要なのはソレアイト岩系斑糲岩のグループである。それらは大陸地域では南アフリカのブッシュフェルト貫入岩体(450キロメートル×270キロメートルの広がりと5キロメートルに及ぶ厚さをもつ巨大なロポリス)をはじめ、アメリカのダルース(延長240キロメートル、最大幅50キロメートルの三日月型シル)、カナダのサドベリーなどの岩体が有名である。海洋底ではオフィオライトophiolite(超苦鉄質岩、苦鉄質岩、チャートなどが複合して造山帯に産するもの)の一部として、上位の枕(まくら)状溶岩と下位の橄欖岩層との間に挟まれた層状の岩体をなす。これらの大規模な岩体では、玄武岩質マグマが完全に固まるまでに分別結晶作用や早期に晶出した結晶の沈積作用がおこるため、超苦鉄質岩から珪(けい)長質岩に至るさまざまな岩相が層をなしているようにみえることが多く、層状貫入岩体とよばれる。
 斑糲岩そのものは装飾用石材として利用される。重金属に富む沈積結晶の多い部分はクロム、ニッケル、コバルト、白金などの鉱床として(たとえば南アフリカのルステンバーグではブッシュフェルト貫入岩体の一部を白金の鉱床として)採掘されている。[千葉とき子]

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