日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブル・フィダー」の意味・わかりやすい解説
アブル・フィダー
あぶるふぃだー
Abū al-Fidā'
(1273―1331)
マムルーク朝シリアのハマーの領主、歴史学者、地理学者。アイユーブ家の出身で、ダマスカスに生まれる。聖ヨハネ騎士団のマルカブ城攻撃をはじめ、十字軍との戦いに参加した。マムルーク朝のスルタン、ナーシルに仕え、1310年にハマーの領主となり、マリク(王)の称号を与えられた。その後スルタンの称号も与えられシリアの全総督に優越する地位についた。主著に、それまでの年代記を要約して同時代の記述を加えた1329年までのイスラム世界史『人類史概要』と、アラビア地理学を集大成しとくに天文学による経緯度の記述に詳しい『諸国史』(1321)がある。
[菊池忠純]