改訂新版 世界大百科事典 「ナーシル」の意味・わかりやすい解説
ナーシル
al-Nāṣir Muḥammad
生没年:1285-1341
マムルーク朝の第10代,13代,15代のスルタン。在位1293-94年,1299-1309年,1310-41年。第8代スルタン,カラーウーンal-Qalāwūn(?-1290。在位1280-90)の息子で,有力アミールたちに推され9歳で即位したが実権はなく,2度目の治世もほぼ同様であった。しかし三たびスルタン位に就いたナーシルは,子飼いのマムルークを養成して政権の基盤を固め,モンゴルと十字軍の脅威が消滅した後の安定した国際環境の下で,もっぱら内政に力を尽くした。エジプト・シリアを対象とする全国的な検地は軍人による農村支配に統一と規律をもたらし,紅海と地中海を結ぶ通商路の安全確保の政策と相まって,30年余に及ぶ長い治世の下でマムルーク朝の最盛期が現出した。
執筆者:佐藤 次高
ナーシル
al-Nāṣir
生没年:1157か58-1225
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報