日本大百科全書(ニッポニカ) 「アメンヘテプ」の意味・わかりやすい解説
アメンヘテプ(3世)
あめんへてぷ
Amenhetep Ⅲ
生没年不詳。古代エジプト第18王朝9代目の王(在位前1417~前1379)。トゥトメス4世とその妃ムテムイアとの間に生まれた。ムテムイアはメソポタミアの大国ミタンニの王女で、両国の同盟関係強化のためにこの結婚が行われた。アメンヘテプ3世も同じミタンニから2人の王女を迎えた。ただし側室としてであった。正妃はエジプト人でティイという。彼の治世は戦争のほとんどない時代であり、文化の時代となった。文芸と学問の人である書記が際だって尊重され、高官は競って自らの彫像を書記姿でつくらせた。王は各地に神殿と記念物を豪華に建て、王の彫像をそこに飾った。いまもテーベ西岸に立つ「メムノンの巨像」は王の像であり、台座を含めて高さ18メートルに達する。王はまた、アメン神を頂点とする伝統的な多神教を奉じつつも、アトン神にも関心を抱き、王の船の一つに「アトンの輝き」という名を与えた。晩年は王子アメンヘテプ4世(イクナートン)と共同統治した。
[酒井傳六]