改訂新版 世界大百科事典 「メムノン」の意味・わかりやすい解説
メムノン
Memnōn
ギリシア伝説のエチオピア王。曙の女神エオスとトロイアの王子ティトノスTithōnosの子。トロイア王プリアモスの甥。トロイア軍の総大将ヘクトルの戦死後,援軍を率いてトロイア戦争に参加し,ギリシア軍第2の勇将大アイアスと互角に戦ったあと,老雄ネストルの子アンティロコスAntilochosを討ったが,アキレウスに討ち取られた。その死体は,ゼウスに強請して息子の不死をかちとった母神の手で,戦場から故郷の地へ運ばれたという。エジプトのテーベ近くにあるアメンヘテプ3世の一対の座像(高さ約20m)は,誤って〈メムノンの巨像〉の名で知られてきたが,前27年の地震に遭って以来,朝日にあたると弦の切れるような音を発するようになった。これは母神に対するメムノンの挨拶と解釈されて,旅行者の人気の的であったが,2世紀の末,ここを訪れたローマ皇帝セプティミウス・セウェルスの命により,巨像に修復の手が加えられたとき,音が止んだと伝えられる。
執筆者:水谷 智洋
メムノン(ロドスの)
Memnōn
生没年:前380?-前333
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報